歪曲骨家。

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私立永遠星学園高等部生徒会資料8

八冊目

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さらに待つこと15分。おいしく蒸し上がりました。

廊下からカツカツと靴底を鳴らして近づいてくる影がある。我らが警備員さんである。

「……? 電気が付いてるな。誰だ、まったく。」愚痴をこぼしながらもガチャガチャと鍵を開けてくれる。希望の光が、引き戸を開けようとしていた。

室内の様子はといえば、床は水でべしゃべしゃ、机、椅子もべちゃべちゃの、なんかもうバケツをひっくり返した感じだった。スコールが襲ってきて、去っていった感じだ。「やっと来てくれた……!」ホッとして力が抜けた。今まで息苦しかったのに、急に解放された感じだ。実際息苦しかったんだが。

「ここの片付けは誰がするの? カマギリ?」俺は悪くない。俺は悪くないぞ……!!

「よって、ここの掃除は清掃員に任せよう!」「勝手に納得しないで?」いやほらさ、なんか心も読めそうじゃん、金庫。まぁ、清掃員がいてくれるあたり、私立っていいな。

「明日は清掃員さんはお休み。生徒が掃除する日じゃなかったっけ?」学校の地図は把握できないのに、こういうことだけは覚えてるんだなぁ。それも教祖の特技なのか?

「じゃぁ、生徒会室の掃除は自動的に、」「カマギリと愉快な仲間たち。」「………。」「明日にはちょっと乾いてるかもしれないよ。」無理だ。ここの窓は工事用のやぐらとブルーシートで覆われている。換気扇や通気口のたぐいもない。扉は俺らが出て行けばしめられるだろうし、これだけ大量の水の逃げ道はもはや存在しない。乾燥は絶望的だ。

突然、今まで鳴り響いていたBGMが止まり、扉が開いた。鍵にも湿気が入って、手間がかかったのだろうか。そして警備員さんが乗り込んでくる。

警備員さんはしばらく部屋の湿っぽさに気を取られていたが、程なくして俺らの存在に気がついた。パチクリとさほど大きくもない目を瞬かせ、それから活動を停止した。つまりはフリーズした。固まったの方がわかりやすいかな。

そりゃまぁ、ただ電気の消し忘れだと思って入った部屋に男女がべちょ濡れで佇んでたら、驚くわな……。うん、状況を確認して俺も驚いたぞ。

「あの、警備員さんありがとうございます! 私たち出れなくなっちゃってて……!!」出れなかったのは事実だが、理由は深くは話さない金庫、もといえんま。

 「……ん? あ、そうか、よかった……な?」警備員さんはしどろもどろに対応してくれた。解凍されたらしい。

「ところで警備員さん、今何時ですか?」警備員さんは腕まくりをして、時計を確認する。わりかし使い込まれたふうの時計だ。

「えっと、今はね……7時28分とあるよ。」7時半か。あんまり時間経ってなかったんだな。家に着く頃には大体8時か。

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「そうですか。では、御機嫌よう!」金庫、もといえんまは元気キャラの押しの強さで警備員さんを圧倒し、そのまま廊下を走り去っていった。俺もカバンをつかみ、重い体を持ち上げてあとを追う。じっとりと張り付くシャツが気持ち悪い。

「では、また明日!!」俺も元気キャラで押し通し、警備員さんの横をすり抜けて廊下に出る。金庫、もといえんま(面倒だし、脳内ではえんま呼びに統一することにする。金庫なんて口にもできないが。)は、もう廊下の角を曲がっていて、姿が見えなくなっていた。重い足を引きずり、ズルズルと階段を下りる。窓の外は夕焼けのかけらもなくなり、代わりに月があたりを照らしていた。

 

明日は晴れ、かな。また明日もえんまは校門に立っているんだろう。えんまと過ごした日々はごく短いのに、それが日常で、当たり前になっている。

そんなことが、少し、不思議だった。

 

八冊目fin.

いい笑顔。

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