歪曲骨家。

創作小説置き場です。

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ヒカゲモノ3/3

※百合ってる

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
朝目が覚めると、なぜかキッチンで横になっていた。のそのそ起き上がると、背中が痛い。硬い床の上で寝たのなら当然だが、どうしてこんな所で寝ていたのだろう。シンクには梅酒の缶が4本。水洗いした様子はない。庵が飲んだ後片付けなかったとはめずらしい。

今朝はカフェオレのリクエストをもらっていたのでコーヒーを淹れる。冷蔵庫から牛乳を出した所で、彼女が起き出してきた。
「おはよう。」
「……おはよ。」
彼女は私から牛乳を受け取ってまな板の上に置くと、私を壁に追い詰める。壁に片手をついて、逃げ場をなくす。
「ちょ、なになになに……!」
残った手が私の顎を捕らえる。くっと上を向かされて、嫌でも彼女と目が合う。顔が近い。そして一瞬だけ唇が触れ合う。顔を離した彼女は少し不機嫌そうだった。そういえば目の下にはクマが刻まれている。寝不足で、実はまだ完全に起きてない? 壁についたままの手をちらちら見ながら目で訴える。彼女は目を細めて、それも大層気怠そうに、私を見る。
「昨日のお返しだ馬鹿。」
「えっ?」
「もう私、真莉とはお酒飲まない。」
「ちょっと、どういう事?」
「私、あの後眠れなかったんだから。」
「昨日って、昨日私が何かしたの?」
「……覚えてないの?」
「昨日は買い物して映画見ただけでしょう。」
「その後。」
「コンビニで牛乳買った。」
「その後。」
「その後? 寝た?」
「……綺麗に忘れてやがる。」
「なに、何したの私?」
彼女はあからさまに目を逸らして、言い難そうに口をモゴモゴとさせる。口を開きかけて、閉じて、をしばし繰り返す。ようやく彼女は口を開いて、数秒固まって、言った。
「…………………………舌入れられた。」
「…………。………………えっ。」
私が? 私が彼女の? 舌? クエスチョンマークが脳内で大繁殖する。さっき彼女が私にキスしたのを思い出して、顔がカッと熱くなる。お返しって、お返しって。私が昨日、彼女にキスしたの? しかも舌?
「全っ然覚えてない……。」
「あれだけドキドキさせといて卑怯な。」
「何してるの昨日の私……。」
「酔ったらもう別人みたいなんだもん。」
「酔ってたの、私?」
「缶、流しにあるでしょ。」
シンクに転がっていた梅酒の缶。庵がひとりで飲んだのだと思っていた。
「本当なの、それ?」
「真莉は疑うのが好きだ。」
彼女が眉間に皺を寄せながら言う。どこかで聞いたような気がする。昨日、聞いたような。彼女が、挑発するような。
「思い出した?」
「……ぼんやり。」
彼女と昨日、梅酒を飲んで。それから。
「……あぁ。」
大体思い出した。気がする。確かに私は彼女にキスした。かもしれない。
「ごめん。」
「許す。ただしコーヒーは淹れ直すように。」
彼女が手を離して、キッチンをあとにする。淹れたてだったコーヒーから立ち上っていた湯気はもう見えなくて、牛乳パックの表面は結露して水滴がついていて。私は壁づたいにずるずると座り込んだ。火照った顔を覆う手は冷たい。
「あ、ちゃんと名刺も描いてよ?」
ひょこっと顔だけ出した彼女に解りやすくびっくりして、高速で頷く。それを見た彼女が満足そうに去って行った。

「カフェオレね。」
壁づたいにずるずると立ち上がって、冷めたコーヒーをボトルに移す。ボトルと牛乳は冷蔵庫に入れて、新しくお湯を沸かす。
「カフェオレ。」
とりあえず落ち着こうと思った。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「いい感じだね。」
「そう? よかった。」
彼女の名刺は、指輪を嵌めた手がカフェオレのカップを持っている絵だ。思いついたらあとはサクサク進むもので、案外はやく描き終えられた。
「庵の『気分転換』のおかげ。」
「……おぅ。」
彼女が赤面する。いつもは私が赤くなりっぱなしだから、ちょっとだけ気分がいい。
「たまには一緒にお酒飲みたい。」
「……年に1回なら許す。」
「もうひと声。」
「3カ月に1回。」
「もうひと声。」
「月に1回……。」
「やった。」
まだ赤みの引かない彼女の頬をつつく。彼女は身を引いて2撃目をかわす。指を追随させて、彼女から逃げ場を奪う。倒れ込んだ彼女に覆い被さる。彼女は目を丸くして、私を見つめる。
「真莉、酔ってないよね?」
「さて、どうでしょう。」
彼女はぎこちなく笑った。

fin.

やりきった感。すみませんありがとうございました。

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