歪曲骨家。

創作小説置き場です。

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私立永遠星学園高等部生徒会資料15

十五冊目

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「この学校にいるんじゃないのか?」静かにえんまを見つめ、返答を待つ。

しかし、いつまでたっても返ってくるのは重い沈黙のみだった。

やがてえんまが口を開き「私、そろそろ帰るね。」カバンを手に取り引き戸をあけた。「あ、遅くなったし、途中まで送ってくよ。駅まで?」気が利く生徒会長風の雰囲気を貼りつけて言ってみた。たまにはこういうところでイメージの回復を図らないとな。

「うん。でも、悪いよ。」「いーって。俺もこっち向きだし。」嘘だけど。ホントは逆向き、ってとこまでいかないけど、50度くらい違うかな。ま、どうでもいいさ。

「じゃあ、一緒に……。」「おう。」揃って生徒会室を出て、俺は扉に鍵をかける。

まだ、湿気ルーム事件から1日しか経っていない。そうは思えないほどの時間の流れを感じる。昨日の今日なのでさすがに何もないとは思うが、心配なのでついて行くだけだ。俺がついて行っても役に立つどころか足手まといな気がするけどな。

「あの、さ。さっきの話だけど……。」歩きながらえんまが話しかけてきた。さっきの話というのは、敵対教団のメンバーの話だろうか。

「うん?」あえてえんまの方は向かず、暗くなった空を見上げていう。

「仲間を、疑うのは良くない、よ。」途切れ途切れに告げられた言葉は、消え入りそうで、少し震えていた。えんまを疑っているわけでもないのに。

「疑ってなんかねーよ。あくまで可能性の話。」ぶっきらぼうな物言いにならないように気を使ったつもりだったが、あまり効果はなかったようで。

「そっか……。」一、二度目元を制服の袖で拭って、それからえんまは黙り込んでしまった。

しばらく無言で歩き、やや先を行くえんまが曲がり角を曲がりかけたその時。

突風が俺の左肩をかすめた。鋭い痛みを覚えて左肩を確認すると、鎌いたちにあったかのようにすっぱりと切れていた。

「……っつ!」堰を切ったように溢れ出す血液。それが痛みからやや遅れをなして飛び散る。慌てて右手で押さええたが、すでにかなりの量の血液が地面に弧を描いている。「カマギリっ!?」えんまが振り返る。が、振り返った途端にまた突風が吹き、えんまの髪がパラパラと地面に落ちる。

「っ!!」風の出処を見やると、そこには一人の青年が立っていた。

「あーあー、外したかぁ。ま、すぐ終わっちゃったらつまんないけどー。」長い黒髪を後ろで束ね、肩に何かを担ぐような格好で立っている。

「あんたは……っ?」

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「オレはさぁ、桃源ってんで花鳥の使いのもんだよー。」花鳥。確か蜘蛛の糸のライバル教団の教祖だったはずだ。ということは、こいつはライバル教団の一員。

「私に用、あるんだよね。」「そのとぉり。お前を潰さねぇといけねぇわけ。」

「じゃ、悪いけどすぐ終わらせるよ。」言うが早いかえんまはまっすぐ前へ跳んで、桃源との距離を一瞬にして詰める。回し蹴りを放とうとした足を、無理やり後ろへ引き戻す。えんまが足を引くのと紙一重で突風が吹く。

突風が吹く瞬間、桃源は右手を前に出していた。風を吹かせる能力でもあるのだろうか。それも、かまいたち顔負けの風圧を誇る風。強敵、なのか。

えんまはすかさず蹴りを繰り出すが、桃源も右へ跳んでかわし、左脇腹をかするにとどまる。また桃源は右手をえんまの方に向け、えんまは左へ跳ぶ。一瞬速くえんまがよけて、突風が地面をかする。

かすめた地面には、亀裂が走っている。それほどの威力があるということか、それともイカサマか。えんまが立ち回りに集中している以上、俺は桃源についての情報を少しでも多く引き出さなければならない。

桃源の動きを目で追う。幸い追えないほどのスピードではない。二人の力は均衡しているように見えるが、風の力を除けば確実にえんまが優勢だろう。

ただ、厄介なのがこの風で、見えない上に桃源が右手を動かすまで攻撃の方向が読めない。目線を追うとかいうのも聞いたことがあるが、桃源の場合は長髪が邪魔をして目が見えない。やはり桃源が右手を出すまで攻撃の方向はわからないようだ。

桃源の右手を注意深く観察する。何かを握るような手つき。さらには手首のスナップを利かせているようにも見える。風を出すのに必要なのだろうか。

「大口叩いた割に、たいしたことないじゃぁん。」一閃。桃源の右手がえんまの左腕めがけて振り下ろされる。かわせる、と思った。

ところがえんまはさっきの亀裂に足を取られて、うまくかわせない。途端にえんまの右腕から鮮血が舞い、えんまは顔をしかめ、桃源は笑う。

「所詮はただの高校生、かぁ。つっまんねーのぉ。」桃源はえんまが動けないと見て攻撃の手を緩め、終始上げっぱなしだった右手を下ろす。

「オレごときで立ち止まってんじゃねぇよー。俺なんてまだまだ序の口、エチュードなんだからよぉ。」そしてまた顔の高さにまで右手をあげ、左側へ引く。

「レクイエムはこっからだぜぇ!?」引いた右手を勢いそのままに、右へ振り抜く。

はずだった。しかし桃源の右手が左側の塀に差し掛かった途端、ゴッと鈍い音がして一瞬動作が停止する。そのあいだにえんまは後ろへ飛んで回避。桃源は舌打ちとともに攻撃をやめる。

いま、塀にひっかっかた? 風がひっかっかるなんてことはないだろう。

つまり、桃源の武器は風じゃない。風じゃないとしたら一体何だ。見えないのは何かトリックを使っている。それがなんだかは分からないが、鈍い音からおそらく金属製の武器だろう。

地面の亀裂、それから先ほどひっかっかった塀に目を向ける。真っ直ぐで、深い。例えれば包丁か刀のような……。それから重量がある。アスファルトの道路や、コンクリの塀に傷をつけるくらいだ。刃渡りも結構ある。15~20cmってとこか。

なんだ。考えろ、考えろ……。重くて、鋭利で……。

あ。

 

 

「えんま、鉈だ!!」依然桃源との立ち回りを続けているえんまに向けて叫ぶ。

「鉈?」えんまは一瞬こちらに疑問の視線を向けたが、すぐに納得したようで前を向き直った。さっきよりも効率的に立ち回る。武器の形状や特徴がわかれば、それだけで断然有利になる。

「ぽんぴん。オレの武器は鉈だー。」セリフの合間にも鉈を振るってくる。しかしえんまには届かない。

「武器が見えないのは、もしかしてあんた……『躯持ち』?」

「うーん。半分正解ってとこかなぁー。」煮え切らない回答をよこす桃源。

「俺は完全な『躯持ち』じゃないー。その証拠に、武器にしかこの効果はかけられないんだぁー。」確かに、桃源の体自体は見えなくなっていない。それが不完全たる所以か。

「うちの教組はねぇ、『他人の能力を開花させる能力』の持ち主なんだなぁー。」桃源はおっと、余計なこと喋っちゃったなぁーと付け加えてから、再び、鉈を振るう。

鉈はえんまの右腕に振り下ろされ、すんでのところで止められた。

えんまの、左手に。

「私が鉈なんかに屈すると思った?」えんまは掴んだ桃源の右手をぎちぎちと締め上げ、続ける。「能力のことは少し予想してた。ほんの少しだけど。」桃源の右手に次々と血管が浮く。「まさかこんな形でとはね。」桃源の手のひらは青白く染まり、力を失っていく。「花鳥に伝えろ。カスを寄越してんじゃないってね。」ついには手にしていた鉈が手から離れ、姿を現す。正確には姿を現したのではなく、見えるようになっただけなのだが。

「まったく、オレも悲しい役回りだぁー。」桃源は口調はそのままに泣き言をいう。

 

そして次の瞬間には、姿を消していた。

「逃げ足だけは早いんだから。」

 

えんまは、輝きを放つ月を見上げ、つぶやいた。

 

十五冊目fin.

やっと敵キャラの登場ですね。

AUTHOR: ab-kanade-love-07-01 DATE: 11/13/2012 00:55:29 ホワイト含めて全4部作と番外編3作 による世界観統一のかなり大がかりなシナリオとなっておりまするww 今2部作終わって番外編行くか行かないかで迷ってる
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