歪曲骨家。

創作小説置き場です。

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私立永遠星学園高等部生徒会資料16

十六冊目

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「カマギリ、大丈夫!?」えんまが立ちすくむ俺の方に駆け寄ってくる。いつの間にかえんまの左腕の出血は止まっている。

「おう……それよりお前は大丈夫なのか、腕?」俺の左肩はずっと押さえていたから出血はあらかた止まっている。ただ、右手のひらが自分の血液でヌルヌルして気持ち悪い。

「私は大丈夫。筋肉で血管を圧迫して止血してるから。」至極当然のように忍者っぽいことをやってのけるなぁ、ほんとに。えんまの足元には血だまりどころか血液一滴すらなかった。先ほど桃源を締め上げた時にはすでに止血は済んでいたらしい。もしくは、あの時ついでに止血したのか。

「ごめん、ね。また巻き込んじゃって。」うつむき加減に謝罪を述べるえんま。

「お前が悪いわけじゃない。それに、ついて行くって言ったのは俺の方だし。」まだ左肩が痛むが、精一杯の笑顔を取り繕っていう。えんまが悪くないのは事実だ。

「右手、どけて。」えんまが左肩を押さえている右手を指して言う。俺は素直に右手をどけ、押さえがなくなった傷口から流れ出る血液は、少しだけ量を増した。えんまは俺と向かい合うようにしゃがみ、左手で俺の左手を支えた。

えんまはカバンから包帯を(持ち歩いてるのか)取り出し、足元においた。それから俺の制服の左袖を破き、傷口を露出させる。空気に触れた傷口が少し痛んだ。

それからえんまはガーゼを(持ち歩いてるのか)とりだし、傷口を拭く。乾いたガーゼが肌に当たる。ガーゼが血液を吸って赤く染まる。そのかわり俺の不快感は少し軽減された。

またえんまはカバンに手を突っ込むと消毒液を(もう突っ込まない)取り出し、俺にチラ、と目線を向けてくる。覚悟しておけということだろう。叫ぶと近所迷惑になる時間だし。えんまは傷口に遠慮なく消毒液を「いってえええええええええええええ!!」ぶっかけた。それから足元にあった包帯を取り上げ、手際よく巻いていく。ちょうどいい長さのところで包帯を引きちぎり、結ぶ。

またたく間に治療は完了し、俺の左肩は真っ白な包帯に覆われた。

「えんまも巻いとけよ、包帯。」「え?」「え?って……。お前も怪我してんだろ?」「うん。」さも当然のように言い放つえんま。もしやこいつ……。

「自分じゃ巻けないんだな?」「……う。」えんまは痛いところを突かれたとばかりに顔をしかめる。素直じゃないよな、そこがまたって何言ってんだ俺。

「やってやるよ、ほれ。左手出せよ。」えんまは渋々といった様子で左手を差し出してくる。受け取った手は、ひやりと冷たかった。無理に止血をしていたせいで、指先にまで血液が回らないんだろう。全く、無理しやがって。

「袖、まくるぞ。」こく、とうなずくえんま。俺はえんまの左袖を肘までまくる。それから新しいガーゼで傷口を拭く。俺と違ってあまり出血がないためすぐに拭き終わる。消毒液をぶっかけようとしたが、さすがにまずいかと思ってちょろちょろとかける。最後に、余った包帯を巻いて終了。やや不格好だが、俺にしては上出来じゃないか。やったことはなかったけど。見よう見まねは得意なのだ。

「できた。もう遅いけど、大丈夫か?」右手の携帯を開きながらいう。ディスプレイの明かりが嫌に眩しい。疲れ目には優しくないようだ。さっと時計だけを確認して携帯を閉じる。午後9時を回っていた。俺の家はまだ誰も帰っていないだろうが、えんま宅はどうだろうか。

「うん。うち、門限だけはゆるいの。」カバンの口を閉めて立ち上がるえんま。

「じゃぁ、カマギリも気をつけて帰ってね。おやすみ。」軽く手を振って歩き去るえんま。

「ああ、おやすみ。」俺はそれをしばらく眺め、えんまが曲がり角の向こうに消えたところで立ち上がる。制服についた砂を払い、肩の傷は家族にどう説明しようかと思案を巡らせながら、月光が降り注ぐ道を急いだ。

明日は、遅刻せずに学校につきたい。それを願うばっかりだ。

えんまの治療のおかげか知らないが、左肩が少し軽い気がする。俺は右利きだから治らなくても生活に支障はないけど、怪我ってのは、精神にも来るからな。そうそうに完治することを祈る。

最近、願ったり祈ったり。神頼みではないが、何かにすがるような思考傾向にあるな。

えんまの影響かな。知らないうちに感化されてる。少し悔しいけど、このままでいいや。あいつには力がある。それだけだ。

パカッと、時代遅れの携帯を開く。10時2分。姉貴が帰ってきていてもおかしくない。早く帰ろう、そして面倒が起こる前に眠りにつこう。学校からは結構歩いてきていたみたいで、見知らぬ道が続いていた。道っていうのは、明るいか暗いかだけでも表情を変える。それが不思議で、好きだ。学校まで徒歩で通うのは、このこともあってだ。周りはみんな自転車とか電車とか、割と遠くから通っているみたいだけど。

土地勘はあるほうなので、割とすぐに見知った道に出る。ここからなら目を瞑ってでも家まで帰れる。危険だからやったことはないけれど。架空の視聴者のみんなも真似するなよ。冗談じゃなく轢かれる。

そうこう考えてるうちに家に着く。家の窓からは薄明かりが漏れている。

……ん? 薄明かり………だと。まずい。非常にまずい。

姉貴が帰ってきている。それもかなり最悪の状況で。

あー、どうしよう。姉貴が絡むといろいろ面倒くさい。特に今すごく面倒くさい。家の明かりが薄明かりになってるときは大抵姉貴が酒飲んでる。しかも酒癖悪い。

どう切り抜けるべきだろうここは。あいにく俺は忍者じゃない。「れおーん。」2階の窓から忍び込むなんて芸当はできない。そもそも窓の鍵がしまっている。登れたとしても結局は入れない。トイレの窓はブラインド式。「きいてんのかぁ。」風呂の窓は網戸がぴっちり。

完全に締め出された。すごくデジャヴである。「れーおーんー!」今回は外だけど。

なんだかさっきから幻聴が「きけぇ!!」雷鳴の如き声量。近所迷惑だから。いつの間にか姉貴が外に出てきていた。向かい合っている姉貴はスーツ姿で、髪をアップにしているがやや崩れている。姉貴の髪は俺のように完全に赤毛ではなく、ベースは黒髪だ。じいちゃん遺伝子が薄いのだろうか。背は高めで、176cm。最も本人の主張だから詳しいことはわからない。実際にはもう少し高い気がするが。姉貴はそれを気にしてかいつもヒールの低い靴ばかり選んでいる。ちなみに今は健康サンダルだ。

「姉貴……、ただいま。」「そうやねぇろ。」「舌、回ってないから。」呂律がまるでなってない声が耳元に響く。酒臭い。相当飲んでるな、こりゃ。

「かえりがおそいんらないのかぇ? ぅえ?」ちょっとウザイ親戚のおじさんみたいに話しかけてくる。外見はちょっとイケてる正社員だが中身はおじさんそのままである。よくリビングでチューハイチャンポンして潰れてる。

「今日はいろいろ大変だったんだよ。」既に相手にするのが面倒くさい。

「いろいろとなぁ。ふぅーん、いろいろぉ。」舐め回すようにして俺の全身を眺めてから、左肩に目を止める。見つかったか……。

「れおーん、何してんのさあぁんた!」「いや、姉貴、これは……、」「そのYシャツ、誰が買ってやったと思ってんろお!」いや、母さんだけど?

「バイトぐらいするから……。」「いんや、うちそんなに困ってないから。」いきなりシラフになった。呂律も元通りである。少し会話が楽になる。酒臭さは依然かわりないが。しかし姉貴は俺がバイトの話を持ち出すたびに否定してくるな。そんなに俺を世間知らずにしたいのか。

「だいたい姉貴、着替えてから飲めよな。シワだらけじゃん。」帰ってきたままで酒飲んで潰れるのがいつものパターンである。

「なにおう! あたしまだ24ですけどー!!」そっちじゃねぇよ。服だ服。

「なんか……、もういいよ。」面倒くさい通り越して呆れてきたぞ。

「それ一番悲しぃー!!」駄々っ子のように俺の服の裾をつまんで引っ張る姉(24)。ちょっと、破れるから。かまってちゃんの姉である。上司がダメだと部下が優秀になるというが、姉弟でもそうなんだろうか。そうなんだろうな。うん。この姉が何よりの証拠だ。俺が優秀かはともかくとして。

「姉貴がそこにいると家入れないから。」「ここを通りたければ俺を倒していけぇ!!」何言ってんだ。少年漫画か。しかも結構古い。姉貴はキャリア組のくせに馬鹿である。会社でもこうなんだろうか。ちょっと心配だ。

「冗談だって。」本気だったら怖い。「ちょっと冷えてきたね。」姉貴が肩を震わせながら言う。ちなみにシャツ一丁である。上着は家の中のようだ。

「そんな格好してるからだろ。」「れおんのが寒そうだけど。男児は寒さに強いの?」「知らねーよ。」それに、女児でも強い奴はいる。のは置いといて。

「まいっか。お酒飲んだらあったかくなるし。れおんも飲む?」「丁重にお断りしといてやるよ。」投げやりに答える。こんな姉貴でも友達は結構いたからなぁ。家によく知らない人が来てた。姉貴がいたから俺は友達とか、家に呼んだことないけど。今はもう、友達呼んで遊ぶような年でもないし。

玄関を開けると、酒臭い空気とともに姉貴の靴が脱ぎ散らかしてあった。右足と左足が玄関の対角線上にあった。どう脱いだらこうなるんだよ。

「ちゃんと揃えて脱げっていつも言ってるだろ!」「あーん、れおんがお母さんみたいーーー。」渋々といった様子で靴を揃える姉貴。靴の内面には『鎌切 綴香』とある。綴香というのは姉貴の名前だ。読みは『たいか』だが、両親が『タイガー』と名づけたかったのが目に見えてわかる。姉弟してトラとライオン。そして姉貴は自分の持ち物に名前を書く癖がある。小学生か、と以前突っ込んだら耳がちぎれそうになるほど引っ張られた。あれは痛かった。

「と、いうわけであたしは一人宴会の続きをするので邪魔して欲しいけど!」……。

「前後の文が繋がってないのですが。」邪魔して欲しいのかよ。だが断る

「姉ちゃんの寂しさを紛らわしてくれよー。」またフラれたのか。姉貴は彼氏と酒を飲んだ瞬間ふられる能力がある。まぁこれは別れたくもなるが。

「一人で寂しがってろ。俺は寝る。」姉貴の制止を振り切って階段を上る。「あーん待ってよう!」左肩がまた痛みだしたきがするのは気のせいだろうか。姉貴との接触により精神面にかなりの負担がかかったようだ。飲酒中の姉貴は世界で一番関わりたくない。たぶん。

カバンを放り投げ、制服を着替える。そういえば、もうすぐ衣替えだな。上着を出しておかないと。パパーっとジャージに着替える。あ〜、ジャージ超楽。

ぼすっと、ベッドに横になる。でもりっくんの課題を思い出したのでそのまま降りてしまいそうなまぶたを押し上げ、足を上にあげた反動で起き上がる。しかし起き上がる過程でかかとをタンスに強打。「いってぇーーーーーーー!!」かかとを手で覆いつつ片足でケンケン立ち回る。砂浜に打ち上げられた魚みたいだと、自分で思った。階下から姉貴のうるさーいぃ、といううめき声が聞こえたがこっちはそれどころじゃない。軽く生命の危機だ。両目がじんわり熱くなり、視界が揺らぐ。本当に痛いぞ。ていうか狭いな、俺の部屋。ちなみに4畳半である。

だけど、新しく痛みが加わったことで左肩の痛みは少しおさまった。それもどうかと思うが。虫刺されが痒くてひっぱたく感覚。スケールはでかいけど。

痛みの波がひと段落したので、机に向かう。りっくんからの課題(ただの復習)との格闘をはじめる。レディー、ファイト!

ガリガリ紙を削る勢いでシャーペンを動かす。30分で任務完了が目標だ。

とは言っても板書を別のノートに書き写すだけなのでちゃかちゃか終わる。ものの、えーと、何分だ。時計やタイマーをセットしていたわけではないので正確なことはわからないが、体感時間は42分だ。まずまずだな。

ノートをカバンにつっこみ、軽く時間割を済ませる。朝起きたらちゃんとやろう。

目覚ましをセットし、念入りに確認する。遅刻だけは避けよう。本当に。

まぁ、今日も平和だった。きっと、明日も。

ちょっとばかしのイレギュラーくらい受け入れてやろうじゃねーか。

生徒会長は、寛容なんだよ。

 

 

十六冊目fin.

約5000文字。なんか書くたびに長くなるぜ!

AUTHOR: ab-kanade-love-07-01 DATE: 11/18/2012 19:01:25 お疲れ様です・・・・・・ そして姉ェwwww
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