歪曲骨家。

創作小説置き場です。

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私立永遠星学園高等部生徒会資料17

十七冊目

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さて、地球が回っているので朝である。

今日は遅刻のフラグも立たず爽やかな朝だ。姉貴がリビングで寝てるのは別に爽やかではないが。昨日のとは別のYシャツに袖を通し、ネクタイを締める。ゆるいけど。それから長めの赤毛を左側で結ぶ。頭皮が引っ張られていい感じだ。目が覚める。

時間割もばっちり、左肩もだいぶよくなったみたいだ。軽い足取りで玄関まで行く。

「行ってきまーす。」申し訳程度のあいさつを告げる。どうせ聞いていないだろう。両親はすでに働きに出ている。姉貴はもう少ししたら出るだろう。靴を履き終えて、玄関扉のノブをひねる。「行ってらっさーい。」姉貴の声がした。起きてたみたいだ。寝ぼけていただけという可能性もあるが。

いつもの道も、気分が違えばこんなに違うんだな。すり抜ける風が心地いい。自然と笑みがこぼれた。おばさんからのあいさつにも笑顔で応える。信号も笑顔で待つ。

道行く同級生に変な視線を送られたので自重。そんなに気持ち悪いのか俺の笑顔。

 

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「行ってきまーす。」あ、れおんが玄関にいる。あたし、朝まで寝ちゃったのかぁ。服も昨日のまま着替えてないし、髪もぐちゃぐちゃだ。乙女としてこの状況はどうだ。ま、いいか。

とりあえず行ってらっしゃいぐらいは言っておいてあげよう。

「行ってらっさーい。」行ってらっしゃいと発音したつもりが、なんだか舌が回らなかった。ちょっとジンジンする。噛みながら寝ちゃったかな、舌。

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あたしももう少したったら会社行かなきゃなぁ。面倒くさーい。会社行っても雑誌読んでるだけだしなぁ。あとは面白い作品を選んでー、担当を選んでー。

れおんにはいってないけど、あたし、編集長なんだよねー。月刊スターダストの。昔れおんが愛読してたから、いつの間にかあたしも読むようになって、いつの間にか採用試験受かってて、いつの間にか出世してて、今に至るみたいな。

最近はビビッとくる作品もないしなぁ。いっそのことあたしが描いてやろうか、マンガ。絵に自信は、あるんだけど。ストーリー構成ってのが、どうも苦手なんだよな。文才がないっちゅーか。向いてなかったってわけだよね、結果的に。

ま、楽しく生きてればなんでもいいけど。

 

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校門の前に差し掛かった時に、いつものえんまの声が聞こえてきた。

「蜘蛛の糸でーす。新規教徒大募集してまーす。」やる気があるのかないのか判別しかねる抑揚のない声。しかし今はそれが懐かしくて、安心できた。

そしていつものようにえんまが宣伝をしている。左腕には、昨日と同じように包帯が巻いてある。ちなみに服装は鬼。詳しく言うと著作権が関わってくるから、ふせておくけど。もうすぐ衣替えだって季節なのに、露出多いなぁ。寒くはないんだろうだけど、えんまだから。

「えんま。」少し離れたところから声をかける。

「カマギリ! おはよう。肩は大丈夫?」小走りにこっちへ近寄ってくる。

「おう、おかげさまで……、」えんまの背中で揺れる髪の、左側がバッサリ切れている。というか、切れたままだった。昨日の夜、桃源の鉈に切られたままの状態。

「……お前なぁっ……!」えんまの腕を掴んで、グラウンド側の木陰に向かう。掴んだ腕は、冷え切っていた。「カマギリ?」いぶかしげに問いかけてくるが無視。さらに歩を進め、グラウンド沿いで一番大きな常緑針葉高木の下で立ち止まる。

「普通切ってくるとかするだろ!?」「何の話……、」「髪だよッ!!」「髪……?」不思議そうに自身の髪をさわって、それからハッとしたようにこちらに顔を向ける。

「心配してくれてるの……?」答えにくい質問してきやがる。「……当たり前だろ。」

「………。」切られた髪を眺め、「どうしたらいい?」と訴えてくる。

どうしたらいいって……。

「……後ろ向けよ。」少しだけ、間を置いてえんまが後ろを振り返る。肩にかかっていた髪が、さらりと落ちた。その髪を、耳の方から掻き集める。耳に触れた瞬間、えんまが少し身じろぎをして、思わず手を止めそうになる。手からこぼれ落ちそうになる髪を受け止め、左側に流す。左手で髪を支えながら、右手で自分の髪を縛っているゴムをほどく。左手に持っていた髪をゴムに通して結んでいく。左側が短いから、左側で結べば目立たないだろ。これで今日はなんとか誤魔化せそうだ。

「できた。」「ありがと……。」えんまがなれない様子で、結ばれた髪をいじりながらぽそぽそという。

「おう。」「あの、これ……、」えんまがゴムを指差しながらこちらを向く。

「ああ、やるよ。」「ありがとぅ……。」う、の最後のほうが消え入りそうで、ややネイティブアメリカンだった。意味わからないな。

ゴムをほどいた右側の頭皮が徐々に緩んでいく。眠くなってきたなぁ。カバンに替えのゴム入れてなかったっけ。担ぎっぱなしだったカバンを腹へ回して、ゴソゴソやる。あ、使い捨てゴムがあった。これ、痛いんだよなぁ。姉貴が会社用に買ってきたやつなんだけど、『すぐ切れるからやー!』とか言って俺によこしてきたんだよな。

ったく、俺だってやだよ。

今日は仕方ないのでこれで結ぶことにする。髪をくぐらせるたびにゴムがパチンパチンと指に当たって痛い。罰ゲームか。まぁ、髪を結んだら少なくとも眠気は吹っ飛ぶんだけど。

「そろそろ朝礼だよ。行こ。」えんまが上にあげている俺の右袖をくいくい、とつまんでいう。そうか、今日は朝礼か。毎日立て続けにイベントがあって退屈しないことで。充実してるとも言うな。

「おう。」先に歩き始めたえんまのとなりに並んで歩く。ちら、とえんまに目をやる。今日は鬼のコスプレだけど、毎回毎回衣装はどこで手に入れるんだろ。ネットとかかな。はたまた手作りとか。……流石にそんなに暇じゃないか。教祖だもんな。

「ん?」いつの間にかえんまがこちらを向いていた。「いや、その、衣装とか毎日どうしてんのかなーって。」「これは、蛍が作ってるの。」「……。」あまりの発言に数秒の間を挟む。なんだって、蛍が、なんだって?

「蛍?」「うん。蛍は手先が器用なの。」「ふ、ふーん。」平静を装うのに精一杯で、冷や汗がすごい。蛍って、どんな趣味してんだ……。いや、えんまからリクエストしているのかもしれない……。どっちにしろどうなんだ。

「あのさ、カマギリ?」えんまが遠慮がちに問いかけてくる。

「うん?」「今週の土曜日、空いてるかな?」イントネーションの問題で、『私が、予定空いてるかな?』と言う意味に聞こえたが、『カマギリが、予定空いてるかな?』で、意味的にはいいだろう。いいと思いたい。訛りとかって、なれないと判別しづらいよな。ていうか、えんまはどこ出身なんだろう。聞いたら怒られるかな。

「たぶん、大丈夫だけど。なんかあった?」これでもし、なんのこと?って聞き返されたらどうしよう。羞恥心と後悔に駆られて穴掘って入っちゃいそうだ。

「実はね、制服を買いに行きたいの。」「制服?」「私、本当はもっと早く転校する予定だったから。冬服持ってないの。」「あー、なるほど。」「それで……、」わかったから上目使うな。屈する。

「別にいよ。俺も朱肉買わなきゃだし。」「しゅにく。」子供のように俺の言葉を反芻して、噛み砕こうと頑張る。ていうか、知らないのかよ。

「ハンコのインクのことだよ。」「なーる。」手のひらを拳で打って、なるほどのポーズ。いちいち仕草が小動物くさいな。例えるなら、リス、とか。いや、前歯は出ていない。なんかころころした感じだ。

「じゃ、朝10時に学校で待ち合わせ。」「おう。10時な。」話しているうちに朝礼が行われる体育館のそばを通り過ぎ、玄関で上履きに履き替える。高校だけど、下駄箱あるんだよな。青春スポットだからかな。関係ないか。

トントンと靴に足を押し込みながら、体育館の方に向かう。カバンは……、体育館の入口にでも置かせてもらうか。2階の教室まで悠長に運んでいる時間はないだろう。

「えんま、俺らはこっち。」体育館の後ろの入口に回ろうとしていたえんまを呼び止めて、前の入口を指し示す。「生徒会会員、だから。」

「そっか。」えんまはくるりと振り返り、こちらに駆け寄ってくる。

「今日の朝礼は多分、お前の話題。」半笑いで告げる。「へへ、人気者だぜ。」えんまがあまり言わない冗談を言ってはにかむ。緊張してるのかな。

「……はじめに、理事長のお話です。」扉の隙間から小さく森のアナウンスが聞こえる。これは遅刻になるか? ならないよな!

閉まっていた扉を押し開ける。隔てられていたざわめきが雪崩込んでくる。一瞬遅れて耳に届く理事長の声。俺は、えんまの手を取って、雑踏に身を投げ込む。

 

 

「さぁ、生徒会書記の、お出ましだ。」

 

十七冊目fin.

今回は3500字程度。

姉! 姉! 姉!

AUTHOR: ab-kanade-love-07-01 DATE: 11/23/2012 21:00:59 姉が特殊なのってなんかいいなぁ 性格が特殊ってことね ていうか、番外編書く時間をください
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