歪曲骨家。

創作小説置き場です。

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私立永遠星学園高等部生徒会資料19

十九冊目

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教室に戻ると、もう1限目が始まっている時間なのにも関わらずまだGJが来ていなかった。どうしたんだろう。まぁ、遅刻を咎められないのはいいことだ。

後ろの入口からそっと中に入り、席に着く。カバンの中身を机につっこみ、カバンをロッカーに収める。それから愛読本を取り出す。GJが来るまではこれを読んでいよう。前回栞をさしておいたページを開く。

少し湿気にやられてしまったが、アイロンで復活した。パリパリとページが音を立てるが、気にするほどでもない。

世界には、大きく分けて3種類の人間がいる。

まず『躯持ち』と、『躯持ち』の素質がある者(俺らは『隠持ち』と呼んでいる)。

それから、全く素質の無いもの。『無印』だ。

『無印』はいわば標準的な人間。世界の約3分の2を占めていると考えられる。そして残りの3分の1のうちの半分が『躯持ち』、もう半分が『隠持ち』だ。そう考えると、世界の約6分の1が『躯持ち』ということになる。『躯持ち』の定義は様々だが、多くは人間には有り得ない能力、体質を持っている者。そして『隠持ち』の一般的な定義は、『躯持ち』の能力、体質が不完全な者、だ。『無印』は主にその他一般人のことを指す。

貴重な人材は監禁保護する国もあるという話だ。日本ではそこまでしないが、希に人間国宝に任命されたりする。犯罪者へと転落する者も。まぁ、目立ち方によっては能力も考えものということだ。

『無印』は基本的に『躯持ち』や『隠持ち』と関わったりすることはない。それが世界の法則だ。ただ、俺みたいな例外も中には存在する。

俺がここの生徒会長になった理由は単純で、理事長からの指名があったからだ。成績は上の下、運動は出来る方だが自慢するほどでもない。そんな俺が生徒会長になれた理由は実は今でもわからない。しかも、指名されたのは1年の2学期だ。前任の生徒会長は3年だった。それは、去年就任したばかりだという前任を差し置いて俺が指名されたということだ。

理事長にはどんな考えがあったのか、そしてそれが『躯持ち』ばかりの生徒会とどんな関係があるのか。理事長に話す気がないのだから、きっと表沙汰にしたくない話なのだろう。

 

考え事をしながら本を読むと中身が全然頭に入ってこないな。

栞をさし直してぱたんと本を閉じると、ちょうどGJが教室に入ってくるところだった。何かいいことがあったのだろうか、顔がにやけている。

「今日はいいお知らせがあるぞー。」さらに口を吊り上げながらいう。

「まず地獄谷が生徒会書記に就任したな。おめでとう。それともうひとつ。」GJはこっちが本題だと言わんばかりに顔をほころばせ、精一杯の笑顔で言い放った。

「転校生がうちのクラスに来たぞ! 御狐、入りなさい。」GJが教室の扉を見ながら言うと、しばらくして一人の生徒が教室に入ってきた。

それはあの、クリーム色のマフラーをしている生徒で。赤縁のメガネの左側を人差し指の爪で上げながら、教卓の前に立った。

それからおもむろに振り返って黒板に『御狐 御食』と書き、左側に『みけつ みけ』と書き足した。また前に向き直り、目を細める。

「うち、御狐 御食いいます! 略してミケミケ、よろしゅうな!!」

 

あ、エセ関西人だ。

えんまの背中をつついて振り返らせ『アレお前の仲間?』と書いたメモを見せる。「誕生日は明日、みんな祝ってーな! なんちゃって。本当はバレンタインデーや!」返答は口パクで『まさか。』だった。それからも御食はベラベラマシンガントークをかましていたが、「血液型はBや!」イントネーションが所詮エセ関西人なので聞くに耐えない。「スリーサイズは上から86、62……」俺、実は関西出身です。「75や!」

「御狐、御狐。自己紹介はこのくらいにして、席は……あー。」GJがクラスを見回す。空いている席は、えんまの隣と、俺の隣と、杉木の隣。杉木のとこに行ってくれ。面倒はごめんだ。ついでにエセ関西人の相手もゴメンだ。

「鎌切の隣な。あの赤毛のやつ。」「うぃっす! 鎌切くん、よろしゅうなー。」ぽてぽてと俺の隣にやってきて「御狐 御食! 覚えたか?」2度目の自己紹介を始めた。

「聞いた聞いた覚えたから。」「そかそか。」御食は満足そうに目を細める。これが彼女の癖らしい。狐っぽいな、名前通り。瞳孔も細めみたいだし。髪は、黒いけど。

「鎌切くん、ここの生徒会長なんやて? まだ2年なのに大変やなぁ。」席に座っても御食はマフラーを外さず、また目を細める。

「そうでもないよ。」そっけなく答えて目をそらす。やっぱ怪しいぞ、こいつ。

「ところで1限目、なんなん?」「現国。」「ふんふん、おおきにー。」そう言って御食はカバンからもちゃもちゃと現国の教科書を取り出した。うん、ちゃんと現国の教科書だ。なんだけどなー。

「なんでだよっ!!」「はぁ? 何がやねん。」「なんで1年の教科書なんだよ!?」御食がもちゃもちゃ取り出していたのは1年生の現国の教科書だったのだ。

「あー、やっば。鎌切くん、見してくれはる?」あー、ムカつく。超イライラする。

「エセ関西弁やめたら見せてやるよ。」「え、エセ関西弁やて!?」あたふたとし始める御食。「おう、そーだよ。お前、関西人じゃねーだろ。」

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「う、うぐぅ……。確かにちゃうけど、そやけどさぁ。」あー、もう。

「標準語喋れぇ言うとるやろが。」思いっきしガン飛ばしながら言う。久しぶりだな。10年近く標準語喋ってきたから。

「ほ、本場の方……っ。」イントネーションが標準に戻る。「それでいーんだよ、それで。」「うー。」御食はしてやられたとばかりに唸る。威嚇している狐っぽい。

「しゃーねーから見せてやるよ。」御食の机とのあいだに教科書をのせる。

「さ、さんきゅう。」どんなだよ。今度は欧米かぶれか。日本語喋れ。

「どういたしまして。」窓の方に顔をそらす。しばらくは顔を合わせたくない。

GJの現国の授業が緩やかに始まっていった。

 

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

隣のクラスに転校生が来たらしいです。

ないすばでぃのびじょという話なのでわたしとしては気が気でないのです。一刻も早くその容姿を確認しに行きたいのですが、わたし泉 白水(生徒会副会長)たるもの、授業を途中で抜け出すなんてことはあってはならないのです。ですがまだ授業は始まったばかり。終わるまではあと40分近くあります。わたしの我慢が続く範囲ではありますが、今回はケースがケースです。トイレを装って今にも抜け出しかねません勢いです。あああ会長、無事ですか。いざとなれば地獄谷書記が守ってくれそうですが、地獄谷書記も乙女。いつ抜け駆けするかわかったもんじゃありません。そもそも地獄谷書記が来た時だってですね、わたし気が気でなかったんです。地獄谷書記も大概びじょじゃないですか。足はわたしのほうが細いと思いますけど。あああ会長。どうかあと40分間無事でいてください。休憩時間にはわたしが必ず行きます。

行きますからね!

手元でボキッという音がしたがあえて気にしないことにした。隣のちびっこ男児がこっちを「え?」みたいな顔で見てるが気にしないことにした。数学のつるぺん(鶴見)までもがこっちを見ているが気にしないことにした。

「い、泉。ここの答えは……?」「16√3x+27y!!」「お、おう。そうだな。」つるぺんは今しがた私が言った答えを、ぎゅきぎゅきと不愉快な音を立てつつ黒板に書き込んでいった。半ば適当に言いましたけど、あってたんですね。

早く終わってくださいつるぺん。わたしはこのあと大事な用事がありますの。

つるぺん数学はよ終われ、じゃないと髪の毛剥ぎ取るぞ!

ふふ、我ながら残酷な替え歌を思いついてしまいましたわ。つるぺんにはすでに髪の毛がありませんのに!

折れたシャーペンを手の中で弄びながら授業を右から左へ受け流す。だって会長にノートを見せてもらう口実になりますもの。

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

寒気がした。なんとなく授業が終わったら屋上へ避難しよう。とは言っても、今じゃ屋上も寒いよなぁ。衣替えももうすぐだし。木白のクラスにするか。いっそのこと2階から出たほうがいいか? 森のクラスとか……。うーん。キーンコーン……。

考えているうちにチャイムが鳴ってしまった。どうしよう。気のない号令とともに立ち上がり、礼。とりあえず座って現国の教科書なりノートなりをしまう。すると御食が「教科書、あ、ありがとぅ。」礼を言ってきた。そして言い終わるなり「関西弁じゃないと緊張するう!!」と言って走り去ってしまった。えんまと同じだな。礼を言い慣れてないのかも。えんまの場合は自分でなんでもやっちゃうから礼を言う機会がないからだろうけど。御食も秀才タイプかこのやろう。あんま頭よさそうではないけど。

「会長!!」白水が、スライディング、体当たごふぉあ。白水が突っ込んできた勢いでそのまま後ろに転倒。後頭部強打。意識、ある。「会長!?」

「いいからよいてくれ……。」のしかかったまま話を続けようとする白水を手で制す。いろいろ誤解されるから。

「うはぁ!? すみません会長!」白水は勢いよく起き上がり、ついで頭を下げた。

俺ものそのそと起き上がり、白水の方を見る。

「何かあった?」「いやその、転校生とやらはいずこへ!?」「なんか、走ってっちゃったけど。」「そ、そうですか。会長お怪我はありませんか!?」「だいじょぶ。」ちょっと腹が痛むけどな! なんか腹筋をえぐり取られた気分だけど!

白水はもう一度「すみませんでしたぁっ。」と言うと走り去ってしまった。

 

御食といい白水といい、

「……なんだったんだ。」

 

 

十九冊目fin.

特記していませんが御食は黒タイツっ子です。

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