歪曲骨家。

創作小説置き場です。

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私立永遠星学園高等部生徒会資料20

二十冊目

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「阿弥、収穫は。」よたよたと歩く阿弥に後ろから話しかける人物があった。阿弥の黒装束とは対照的な白装束。さらに、髪は淡い紫色だった。

「教祖様は、喜んでたけど、失敗。」鮮やかな金髪を振って答える。ショートカットに切り揃えられた髪が頬に当たる。かゆい。

「そう。でも、かなり、消耗。」してる。僕の、双子の兄、如来。

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「力の使いすぎは、よくない。」ふるふると頭を振る。僕たちはもともと、二人で一人だから。一人一人の力はごく小さい。

「桃源は。」どうした。「くび。如来も気をつけて。」「心配には。」及ばない。如来はセリフに体言止めを多用してくる。常人には意味を汲み取るのに苦労するらしいが、僕は如来とずっと一緒にいたから。如来と僕は二人でいないと意味をなさない。だから、バラバラはだめ。任務を成功させて、また如来と一緒に仕事をする。

次は成功させる。

 

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「カマギリ。」「……おう、えんま。」自然と反応が微妙になる。立て続けにあんなの……食らわされたらな。エセ関西弁とタックル。

「御狐さん、怪しいよね。」「……だよなぁ。」何しろエセ関西人だったし。

「あのメガネ、ダテっぽい。」「え、そうなの?」あいにくメガネには詳しくないので。目はいい方なんだよな。目がいいと早く老眼になるって言うけど。

「私も変装でメガネ使ったりするから。」あ、なるほど。そういや教祖、だったな。

「そーゆーの、わかるんだ。」「ん。」自信ありげにこくんとうなずく。目がキラキラしてる。仔犬。

「マフラーも怪しいよな。」「うん。」席についても、授業が始まっても取らなかったし。首に傷があるので外したくないですとかいうオチか。

「あ、」「ん?」「御狐さん、戻ってきた。」えんまに促されるまま教室の後ろの扉に目をやる。「ホントだ。」あのクリーム色のマフラーの端っこが見え隠れしている。教室に入るのをためらっているのだろうか。

「ミケミケ。」呼びかけると、ゆっくりマフラーが波打った。マフラーだけ時間感覚がおかしい。常々そう思うのだが。目の錯覚だろうか。

「鎌切くん……?」御食がそろーーーっと顔を出し、すぐに引っ込めた。えんまがいるからだろうか。

「御狐さん、何やってるの。」えんまがずかずかと御食に歩み寄っていき、扉の向こう側へ顔を突っ込む。「ぴゃぁっ!」何かが転がる音がする。御食がこけたんだろう。

「うー、うちは、鎌切くんに用があんねん……。」「カマギリに?」私じゃなくて?という顔を御食に向けるえんま。御食はぷくっと膨れる。

「せや。うち、生徒会に入りたいん!」

 

なんと。

御食からこの言葉が出るのは予想してなかった。え、何生徒会? なんで? 敵の内情を探るため? は? 教祖とかは? 花鳥とかいうオチじゃないの? 意味わからん。

いや、混乱させようとしてるだけかもしれない。油断はできないぞ。

「「生徒会いいいいいいいいいいぃぃぃぃいいぃいぃ!?」」えんまとハモって大絶叫。

「な、何かおかしいこと言うたか? うち。」「おかしいわ! エセ関西弁やめろ!!」「か、関西弁関係ないやろ!」「お前、なんか生徒会について説明受けてないの?」「う、受けたで。『躯持ち』が入るとこやろ。」「そうだよ!」わかってんじゃねーかよし帰れ。「じゃから、うち、ほら、『躯持ち』なんよ……?」「なんで疑問形!?」どっちだよ。『躯持ち』? お前が?

「なんの『躯持ち』か言ってみろ。」言えなかったら偽物な。恥ずかしくて言えないとか認めない。断固認めないぞ。

「……き、狐……。」「狐ぇ?」「よ、妖狐や!」き つ ね 。そうきましたか。

「妖狐って、あの妖狐か。」「せや。あの妖狐や。」御食の細い瞳孔。これは、

「わかった。放課後生徒会室に来い。」本物かもしれない。な。

まぁ真偽は放課後、変化でもさせて確かめればいい。狐は新しいなぁ。

ていうかもう、生徒会の椅子がないぜ。

 

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右手の断面を見つめる。

綺麗に切れていて、皮膚のただれもない。

まるで最初から何も存在しなかったかのように。

オレの右腕は幻想だったか?

桃源郷のように。

在るはずもない世界のように。

 

違うだろ?

オレこそが幻想。

オレの一部だけが幻想なんてことはない。

 

切り離されても。此処にはある。

 

オレの意思が。

 

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そして、御食のエセ関西弁に翻弄されること2時間。昼食タイムである。

「まずいぜ……。」「どないしたん?」「お前がうざい。」「明らかにちゃうやろ!?」「弁当を忘れてきたぜ……。」「なんだ。そないなことか。」「いや重大だろ。」「なんや、財布でも忘れてきたんか。」「いや、財布はある。」「そいなら学食で食べたらええやん。」「お前がうざいんだよ。」「うちも学食だからって言いたいんか!」「やっと気付きやがったか……。」「ひ、ひどいやん!」「悟れよ。」「ムチャぶり!!」必死。「し、静かにしとるから、昼飯抜きなんてせんといて!」涙まで浮かんできている。「ほんとかよ?」「ほんまや! じゃないと罪悪感がハンパないねん!!」「そうか、何食べるかな。えんま。」「なに?」「学食で食べね?」「別に、いいけど。」御食の方をちら。「地獄谷さんまでか!?」「この狐も?」「あんま狐狐言わんといてや!」「そうだけど、嫌か?」「別に。どうでもいい。」「眼中にすらない!?」「そっか、よかったよかった。」「なにが!?」

……なんてことが約3分前。今は広い学食の超隅っこに陣取っている。

俺は親子丼、えんまは持参したお弁当(中身は親子そぼろご飯。)、御食は八宝菜。なんで八宝菜。しかも別におかずとかご飯とかがあるわけでもなく、八宝菜のみ。さらになんでだよ。

「鎌切くんと地獄谷さん、おんなじ親子丼で仲良しやなぁ。」御食がチンゲンサイをつまみながら言う。

「「はぁ?」」ハモる。「なんでそうなるんだよ。」「食べ物なんて人の好みでしょ。」「いやぁ、地獄谷さんはおべんとやけど、鎌切くんはここで注文しはったやろ?」「親子丼の気分だっただけだけど?」「ほんとにぃ?」「あーもーだから嫌だったんだよお前と来るの。」「そんなこと言わへんで、うちさみしいやん。」「一人でさみしがってろよ。」「うん。」「地獄谷さんまで……。ほんまに仲良しやなぁ。」「「関係ない!!」」がたたっと俺とえんまが立ち上がる。「ご、ごめんて……。」後ろから刺さる視線を気にしつつ御食が言う。「ていうかさ……さっきからお前、」俺は御食の手元に視線を落としつつ言う。器にはうずらの卵だけが残っている。

「うずらの卵食うの下手だな!!」御食はうずらの卵をつついていた手を止めてこちらを見る。「これ食うんに上手いも下手もあるんか?」「あるわボケぇ!!」「っひ!」

「そんなに勢いに任せてつついてたんじゃ刺さってくれねえよ!」「え、だって……。」「だってもクソもない!」「うずらの卵ってのはな、圧力に弱いんだ。」「そらそうやな。」「だから、うずらの卵の中心にそっと箸を当てて、ゆっくり力を加えていくんだ。」「ほうほう。」言いつつ御食はうずら食法を実践する。「お、できた!!」「当たり前だ!」「そんなことも気づかないなんて、御狐さんって馬鹿。」「さらりとひどいこといいはった!」「ほら今のセリフなんて全部平仮名。」「そーゆー問題!?」「もういいだろ、認めちまえよ。」「刑事かおみゃーは!!」「チャイム鳴っちゃうぞ。」「早くうずら食えよ。」「もう食べ終わったんか二人共!」「お前が遅いんだよ。」「地獄谷さんなんて、そぼろ箸で食うてそのスピード!?」「日本人だもの。」「そんな、人間だものみたいな!」「喋ってないで食え。」「あい、すみません。」そうして御食はやっと静かに食べ始める。うずらの卵は着実に減っていく。

「「「ごちそうさま。」」」御食が食べ終わるのを見計らって三人で手を合わせる。とっくにチャイムはなって、授業まではあと2分あるかどうかだ。急いで片付けて走って、ギリギリ間に合うかどうか。「お前のせいだぞ、御狐!!」「うひぃ!」意味のわからない叫びを上げながら、対角線上にあるカウンターへと走る。もう学食の中には俺たちしか残っていなかった。みっちりと並べられたテーブルと椅子を避けながら、目的の食器カウンターへ。重ねた食器を差し出しつつ進行方向をチェンジ。今度は直線上にある出入り口へ走る。「走ったらあかんでぇ。」これこそ本場のおばちゃんの声が響く。それでも俺らは足を止めない。止めたら遅刻だ。観音開きの扉を抜けて、突き当たりの階段を駆け上がる。途中で、5限、社会のりっくんとすれ違う。「うおお! びっくりしたぁ。」りっくんはあまり俺らを気に留めた様子もなく、一安心。「陸陸先生、ゆっくり来てください!」「え、ああ。」それにしても、『陸陸』で『りくおか』って読むなんて、日本語は怪奇だなぁ。りくりくとしか読めない。まあこれが、りっくんのあだ名の由来でもある。地理とか教えてたら面白いんだが、残念、りっくんは日本史である。

後ろからえんまと御食、やや遅れてりっくんのゆったりとした足音が響く。りっくんは本当にゆっくり来てくれているらしい。なんて生徒思いなんだ、ほろり。なんて冗談は置いておいて。単に走るのが嫌なだけだと思う。うん。

教室の群れの一番向こう、2年5組! 引き戸をするりと開け放ち、なだれ込む。席に着き、教科書を引っ張り出す。うおりゃぁ。

ぱたんと、教科書を開いたところでりっくんが入ってくる。セィーーーフ。

「きりいつっ。」がたたっ。「きょーーーつけ。」ぴしこ。「れぃん。」ばお。

不思議すぎる音を立てながら全員が礼。風圧か。そうなのか。

 

どうでもよすぎる日常の1ページ。

こんなことがいつまでも続くはずがなく。

歯車は、回りだしている。

 

あの時から。

 

二十冊目fin.

うずら食法はぜひお試しあれ。

ちなみにこいつ→『如来』『きさら』って読みます。

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