歪曲骨家。

創作小説置き場です。

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私立永遠星学園高等部生徒会資料27

二十七冊目

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 土曜日だ。なぜか遠足前の子供のように6時半に起床。もちろん遠足があるわけではない。原因はどうやらケータイのようだ。ピロピロ言っているので手に取ると、新着メールが一件。中身を確認すると、えんまからのようで。

『カマギリ! 昨日確認したら伊勢凡の開店時間が

 9:00からだったの!

 と、いうわけで今日は9:00に学校前ね!!

                    えんま』だ、そうだ。

何も開店早々行くことはないだろ……。とは誰だって思うだろうが、一応返信を返す。

『了解。

                    怜恩』っと。送信を告げるメロディを聴き終えてからケータイを閉じる。湿気ルームの件から早一週間が過ぎようとしているが、俺のケータイは問題なく作動している。別段防水仕様とかいうことはないのだが、なんにせよ優秀である。機種変のめんどくさい行程なんかは踏まなくても良さそうだ。電話帳とかメモっとかないといけないしな、あれ。メアドなんかはなおさらだ。

冴えてきた目をこすって体を起こす。目が覚めてしまってはもう一度布団に戻るのも興冷めというもの。残暑はどこへやら、少しばかり肌寒い中に体を引きずり出す。枕元に置いてあったヘアピンでとりあえず目にかかる前髪を留め、階段を下りる。

「おはよ……。」誰にともなく呟きながらリビングへ続く扉を開くと、

「おはよー。」予想だにしなかった返事が返ってきたので、一瞬動きを止める。

「何だ、姉貴か。」「なによぉ、あたしじゃ不満?」「いや、そうじゃなくて。」なんかいるのかと思ったんだよ、と続けようとしたら姉貴に遮られた。

「じゃぁれおん君、ねーちゃんのために朝ごはんを作ってください。」嫌に真顔なので吹き出してしまった。

「なんで笑うのよぉ。」「いや、姉貴の真顔とか……!」「早く作ってよー。」「はいはいはい。」真顔のまま二の腕をつねってきたので素直に応じる。痛い。

「オムレツ?」「さにーさいどあっぷ!」「はいよ。」そのくらいなら自分でやれよ、と思わなくもないが、姉貴は夜型なのである。朝は壊滅的に活動しない。そのくせ早起きなんだからよくわからない。

冷蔵庫を開けてポケットから卵を2個取り出す。棚から最近新調したテフロン加工のフライパンを出し、火にかける。サラダ油を引き、卵をフライパンに割り入れる。ジュージューと音を立てて透明な白身が半透明に変わる。水をぴゃっとかけて蓋をし、タイマーを3分にセットする。蒸し焼きにしているうちにフライ返しをスタンバッて、皿を2枚用意する。箸と醤油と塩をテーブルに持って行って、ついでにテレビをつけたが大したものが入っていなかったので黒い画面にジョブチェンジさせる。

そこでちょうどタイマーが定時を知らせ、火を消してしばらく余熱での調理を試みる。2分ぐらいで蓋を開ける。蒸気が舞い上がって目玉焼きが姿をあらわにする。それをフライ返しですくい上げ、皿に着地させたあと、二つに割ってもう片方の皿に移す。目玉焼きのかんせーい。

冷蔵庫から昨日のブロッコリーを出して皿にポイポイ乗っける。さらに冷凍庫から食パンを出してトースターにイン。設定を3分にしてジリジリさせる。

目玉焼きの皿を両手に持ってテーブルに向かう。

「ほい。」「さんきゅー。」姉貴は俺から目玉焼きの皿を受け取ると、醤油をかける。俺は塩を振る。トーストが焼き上がるまでの間、目玉焼きを食す。

しばらくして、タイマーの音が軽くなる。そろそろだな。立ち上がってトースターの方へ。謀ったかのようにトースターのタイマーはチンとなる。中からきつね色になったトーストを取り出して、皿に乗っける。

「姉貴、バター?」「うんー。」冷蔵庫からバターと、食器棚からバターナイフを取り出して皿に仲間入りさせる。

「姉貴さぁ。」「なぁにー?」「今日なんかあんの?」姉貴はすぐに答えを返さない。やっと出てきた答えは、「ちょっと、仕事。」だった。いくら姉貴が早起きだって言ったって、今日は早すぎるから。俺が起きたのは6時だし、その時姉貴は既に着替えてリビングにいたんだ。

笑顔でトーストにたっぷりバターを塗る姉貴を眺める。

よっぽどご機嫌みたいだ。

 

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「土曜日のお昼、1時からいいですか?」ザイク君はそう言った。

電話をもらったのは昨日。ザイク君もまがりなりにも学生なので、平日はあまりお暇がないようだ。もちろんあたしはいつでも暇なので、速攻でオッケーしました。

そのせいで今日はあんまりにも早起きしちゃったのです。小学生みたいだなって、れおんなら言うだろうけど。でも、子供っぽさって大事でしょ? 特にあたしみたいな職業だったら、ね。スターダストを読むのって大半は子供、成人女性だし。あたしは子供っぽくて成人女性で一石二鳥なんですよ。

 

ま、これが今日の早起きの言い訳。

もひとつ余計に言うなら、

そんなこと言ってれおんだって、今日はえらく早起きじゃないの?

 

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楽しみだなぁ。

今の心境を一口に表すとそんな感じだ。たかだか制服を買いに行くだけとはいえ、伊勢凡である。デパートである。おまけにカマギリも一緒なのだから。

何を着ていこうかな。クローゼットを開け放って服を見繕う。試着しやすい服がいいのかな……。今まで制服は親が買ってきてくれてたから、よくわからない。今回永遠星にとどまることにしたのは私の意志だし、制服は自分で買いに行くべきだろう。

ピンク色のワンピースにポンチョ、カラータイツにニーハイブーツか。

シャツにネクタイ、キャスケットとショートパンツ、ニーソにパンプスか。

どっちにしよう。2つまでは絞り込めたが、なかなか決め兼ねる。なんとなくカマギリをびっくりさせたい。蛍に選んでもらおうかな……。

ケータイの写メ機能で写真を送りつけて、蛍に聞いてみることにした。タイトル、『どっち?』っと。

程なくして返信がある。蛍も今日は早く起きていたようだ。内容を確認して、ちょっと驚く。ありがとう、と返信を返してから、散らかった服を片付ける。

絶対カマギリを驚かせてやるんだから。

 

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 「寒くなってきたね。」教祖様が独り言か、あーしに話しかけてるのか謀りかねる言い方で聞いてくる。

「そーな。あーしもそろそろ上着着ようと思うぜ。」とりあえず応えておく。確かにグレーの揃いのスーツが本領を発揮するのも時間の問題だろう。

「そう。去来はスーツ、オーダーメイドしなきゃいけないから大変だね。」教祖様は、年中着物のような、カソックなのかよくわからない白い服を着ている。袖口が広く開いた服で、素材はよくわからない。

「まーな。身長ちっせーからよ。でも、教祖様のおかげで暮らしには困ってねーし。感謝してるよ。」あーしらの衣食住は教団の方で面倒を見ていてくれる。教祖様がいてこその今のあーしなのだ。

「もう、その『教祖様』ってのやめてよ。風月でいいって。」教祖様は目深にかぶったフードの奥から微笑みかけてくる。教祖様に顔は、実は見たことがない。フードがかかっていないのは口元くらいだからだ。耳が聞こえない教徒のために口元は隠していないらしいけど。

「いや、マジで教祖様はあーしの恩人だからさ。せめてそう呼ばしてくれよ。」

「そう? 去来がそこまで言うなら別にいいけど。」教祖様はまた微笑む。

「教祖様は、服変えたりしねーの?」ほんの興味本位で聞いてみた。

「ああ、変えないよ。これは自分の制服みたいなもんだし。それに、」

「それに?」

「ビー玉が出しやすいからね。」教祖様はそう言って広く開いた袖口からビー玉をいくつか取り出してみせた。カラフルなビー玉が教祖様の手の中でキラキラ光る。

「ふーん。」ビー玉。教祖様の、武器みたいなもんだ。

 

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「マフラーが、ふさわしい季節になってきたで!」空に拳を突き上げてガッツポーズ。傍から見ればただの変人だが、日々苦労している御食にとっては嬉しさがこみ上げて仕方ないのだ。夏なんかは毛皮を首に巻いているような、というかほとんどそうなので、暑くて適わない。冬はマフラーが自然に見える上、防寒効果もあって一石二鳥だ。メガネが曇るのが唯一の難点であるが。

伊達メガネなので別に休日はとっていても構わないのだが、うっかりクラスメイトに出くわしでもしたら大変なので、一応保険のためにかけているのだ。

今日は転校してきたばかりで制服の冬服がなかったから、近くの伊勢凡まで買いに行くのだ。ここの辺の地理はよくわからないから、同じスケ部の木白についてきてもらうことになっている。

待ち合わせ場所の駅前で、空席になっているベンチに腰掛ける。時計を確認すると、待ち合わせ時刻の10分前だった。少し早く来すぎてしまったようだ。

茶色のブーツをかつかつと打ち合わせる。こんな事態は予想していなかった。なにか暇つぶしできるものを用意しておくべきだったな。とは言ってもあまり本を読むタイプではないし、メアドは木白の分しかないし、結局することがないのだった。

仕方ないので駅構内をぶらつこうと思い、ベンチから立ち上がる。と、後ろから聞きなれた声がかかった。

「御食! ごめん、待ったでござるか?」木白が笑顔で駆け寄ってくる。

「ううん。うちもさっき来たん。」木白は「良かったでござる。」と、本当に胸を撫で下ろした。

「なんか、似たようなカッコでござるな。」木白がそう言うので改めて自分たちの服装を確認する。

木白は白のニットワンピースにブラウンのカーディガン、ニットのニーハイソックス、黒のパンプス、ピンクのリュックサック。

うちはというと白のニットにキャメルのキュロット、クリームのマフラー、赤のカラータイツ、ブラウンのブーツ、赤のショルダーバッグ。

確かに似通っている。うちは単にマフラーに合いそうな服を選んだだけなのだが。

「せやな。なんや姉妹みたいやん。」「そうでござるな。」「うち兄弟おらへんから、そーゆーの嬉しいねん。」「拙者も姉妹はいないでござるよ。弟はいたんでござるが。」「そーなん? なんて名前?」「楽。可愛くない盛りで、大変でござるよ。」「でも、いいなぁ弟。」「あげようか?」「えっ!」「ジョーダンでござる。」「びっくりすんやないけ……。」「えへへ。」「そろそろ行く?」「そうでござるな。」

伊勢凡は駅から歩いて数分のところにあるらしい。木白はよく行くらしい。

制服を買ったら映画を見たりショッピングしたりもする予定だ。

楽しくなるといいなぁ!

 

二十七冊目fin.

まさかの展開。

伊勢凡。

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