歪曲骨家。

創作小説置き場です。

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私立永遠星学園高等部生徒会資料28

二十八冊目

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「カマギリ、おはよっ!」嫌にテンションの高いえんまが校門の前で待っていた。

「おはよ。」軽く手を挙げて応じる。

えんまは、いつもの通り頭に赤いハチマキを巻いていて、何故かその上からキャスケットをかぶっている。白と黒でまとめたコーディネートは、なんというか想像していたのと違っていた。ふわふわしたワンピースとか、そういうのだと思っていたから。俺の面食らった顔を見てか、えんまが笑みを強くする。

「驚いた?」口元に手を当ててえんまが訊いてくる。ワイシャツの袖は折り曲げられていて、白い手首が覗く。

「おぅ、そりゃぁまぁ。」曖昧な返事を返し、えんまの服装をもう一度見る。

赤ハチマキとキャスケットはさっき言った通り、白のワイシャツに黒ネクタイ、黒いベストを羽織っていて、黒のショートパンツに茶色のブーツを合わせている。

似合っている。似合っているのだが。

「なんかイメージと違ったからさ。」その言葉を聞いた途端にえんまの笑顔が一段と明るくなり、なぜかガッツポーズをとっていた。

そのあとで俺の服をまじまじと観察して、にまぁ、とか効果音が出そうに笑った。つられて俺も自分の服を見てしまう。いつも通りだった。いつも通りシャツにネクタイだった。ジーンズとかいろいろ相違点はあるけれど。

「ふふ、じゃあ行こっか。」ピンクのリュックサックを揺らしながら、歩き出したえんまが振り返る。俺は「おう。」と短く返事をして続いた。

えんまは楽しそうだし、多少の不可解さには目をつぶるか。

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

「木白は、なんでスケ部に入ったんや?」となりを歩く御食が問いかけてくる。

「んー、なんだったでござるかなぁ。何しろずいぶん昔のことだったでござるし。」

「む、昔!?」御食が驚いたように声を荒げる。何にしてもリアクションがオーバーな子だ、というのがここ最近の御食の印象だ。

「いやいや、2年も前のことでござるから。」笑ってごまかそう、と思った。

「木白って頭はいいのにうっかりさんなんやね。」御食が本当に納得したかのように頷く。この子は素直だ。素直さゆえに、人を疑うことを知らない。

昔の私みたいだ。

ただひたすらに真直ぐで、そして、真直ぐだけじゃダメだと知った。

ふと、話してもいいかな、なんて思った。この子なら、いいかな、と。今まで誰にも話したことがなかった、私の話を。

「嘘、だよ。」気がついたときには話し出していた。口が勝手に動いていた。

「え?」御食は歩みを止めて、私を見る。驚いて、いるみたいだ。

「忘れてなんかない。忘れるわけがないよ……。」必死になって頭に刻み込んできた言葉。私は、忘れたりなんかしない。

「でもね、御食。今はまだ話せない。」既のところでストッパーをかける。ダメだ、まだ話しちゃ。今までのすべてが無駄になってしまう。

「どういうこと?」笑顔が固まったままで、御食が首をかしげる。マフラーがへたりと落ち込んだ。

「いつか、わかるよ。」弱々しい笑顔で、返した。ちゃんと笑えない。今の私は。

「そんな……。」御食はまだ固まったままでいる。

「御食!」私はそんな御食を、

「いひゃい!」思いっきりつねった。

「にゃにふんや、こひゃく!」拙者につねられたまま御食は声を張り上げる。

「気分転換でござる。」表の拙者。

「暗い話は終わり、今日は目一杯楽しむんでござろう?」にっこり笑ってみせた。

御食はしばらくほっぺにかかる拙者の手と、拙者の顔を見比べていたが、やがて同じように笑った。

「てぇ、離ひてほひいんやけろ。」笑った拍子に頬が引っ張られたらしい。

「ご、ごめんでござるよ……。」

私たちはまた、歩き出した。

 

いつまでも、止まらないことを願って。

 

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「これが、伊勢凡……!」えんまが目を輝かせる。日本を転々としてるんなら、伊勢凡よりすごいデパートも見たことがありそうなもんだが。えんま曰く、伊勢凡はこの辺だけに展開されている地域デパートらしい。知らなかった。

エスカレーターに乗って7階へ。朝早いこともあってあまり混んではおらず、すんなり7階へたどり着けた。まだ閉まっている店もあったが、服屋関係は結構開いているみたいだ。先に目的を果たしてしまうべく、まっさきに制服を売っている店へと歩を進める。店は割とフロアの奥の方にあった。えんまはサイズを告げるとさっさと会計を済ませてしまい、梱包された制服を受け取るとリュックに突っ込んだ。そんなに適当に扱うなよ。

「上着だけだったんだな。」制服が突っ込まれたリュックを指差しながら言う。

「うん、他はあるから。」確かにえんまは転校当時から長袖を着ているし、半袖は持っていないだろうがまだ買わなくてもいいだろう。

「俺、ヘアゴム買ってくけど、えんまもなんか見る?」エスカレーターを下りながらえんまの背中に言う。えんまは振り返ってから頷いた。わざわざ振り返らなくてもいいのに。

4階でエスカレータの旅を終了して、足を稼働させる。確か、アクセサリー関係はこのフロアにあったはずだ。

エスカレーターの近くに備え付けてある案内板を確認。エスカレーターとは反対側にあるみたいだ。ぐるっと回り込んで、目的の店に入る。ヘアアクセサリーの他、シルバーや雑貨など商品は幅広い。こういうのは見てるだけでも楽しい。

一番地味なヘアゴムを選んで手に取る。えんまは何やら熱心にピアスを見つめていた。髪から覗く耳に目をやるが、別に穴がいっぱい空いてたりはしない。

「欲しいの?」

「ううん、穴空いてないし。綺麗だなーと思っただけ。」えんまは胸の前で手を振りながら答えた。えんまが見ていたピアスは大きめのリングにシルバーの羽根が付いたデザインで、確かに綺麗だった。

「これなら、あっちに似たようなペンダントがあったと思うけど。」さっきヘアゴムを取ったところの近くにペンダントコーナーがあって、ちらっと見てきたのだった。

「ほんとっ?」えんまの目がきらきら輝く。俺を押しのけて歩いていく勢いだ。が、特別広い店ではないので押しのけることはできず、俺が先導する形になった。

「ほら、これ。」えんまを例のペンダントの前まで案内して、指差す。

「ほんとだー、きれー!」えんまは更に目をキラキラさせて、ペンダントを手に取る。

「ん。貸して。」

「え? はい。」えんまは俺の手にペンダントをのせる。

俺はそれを落とさないように握って、ヘアゴムと一緒にレジに持っていく。

「別々でお願いしまーす。」店員さんはスマイルを浮かべつつ手際よく袋に分けてレジ打ちを開始する。

「1350円です。」財布からぴったり取り出して、レシートを受け取る。

「ありがとうございました。」店員さんはぺこりとお辞儀をして見送ってくれる。

「はい。」えんまにペンダントの入った袋を渡す。

「え、悪いよ、払うって!」えんまが財布を取り出そうとするのを手で制す。

「いいよ、ついでだし。」カッコつけてみたつもりだったが、えんまには効かなかったようで。「ついでの方が高いっておかしいでしょ。」

「んー。じゃあ俺も何か買ってもらおうかな……。」打開策、模索中。

「あ、それならいいよ!! どれがいい?」えんまが嬉々として財布を取り出す。何でそんなに嬉しそうなんだよ。そんなに借りとか作りたくないタチなの?

「なんでもいいよ……。テキトーに選んで。」

「わかったー!」えんまは顎に手を当てて、どれにしようかなー、とか言っている。それを横目に見ながら、今さっき買ったヘアゴムのパッケージをパリパリ開ける。いつものように前髪を縛ろうとしたが思い直し、後ろ髪もまとめて縛る。夏は終わりを迎えたが、まだ寒さには縁遠い。そのうち髪を切りに行こう。

いつの間にかえんまは支払いを済ませ、袋を持って戻ってくるところだった。

「はい、どーぞ。」にふふとか効果音が出そうな顔で袋を渡してくる。

「はい、どーも。」なははとか効果音が出そうな顔で袋を受け取る。

「まだ、開けないでね。帰ったら開けていいよ。」「なんで?」「なんででもー。」中身は開けてからのお楽しみってことですか。臨むところだぜ。

「まぁ、ありがと。」「こちらこそ。」袋をポケットに入れて店をあとにする。

 

「クレープがいい? アイスがいい?」「アイスかな。俺生クリーム苦手なんだよ。」「そうなんだ、覚えとこ。」「覚えてどうすんだよ。」「ど、どうもしないけど。」「なんだよそれ。」「なんでもなーい。」「あ、すいませんアイス2つ。」「何になさいますか?」「チョコと、何にする?」「じゃあバニラで。」「お待たせしました。」「冷たはっ。」「うお、スプーンが刺さらない。」「あ、おいしーい。」「やっと掬えた。……おぉ、うめぇ。」

 

「あ、カマギリそーゆーの聴くんだ。」「んー、まぁ。姉貴に勧められた。」「へぇ、お姉さんが。」「姉貴は何か色々持ってる。こないだなんて部屋の床が抜け駆けた。」「え!」「本とかCDとか……とにかく買いまくるから。」「そうなんだ。」「俺に押し付けてくるし。」「うわぁ……。」「容赦ないな。」

 

「しゅにく?だっけ。」「朱肉だよ。」「そう、朱肉。」「あとはボールペンと、消しゴム。」「まともに活動してるの?」「こう見えてしてんだよ。」「へーぇ。」「えんまにはこれから議事録とかお願いするよ。」「そーゆーの得意だよ、まかせてカマギリ。」「……、うん。」「何その間。」えんまがじっと見てくる。やめろよ、穴があいちゃいそうだろ。

「んー、なんつーかさぁ。」言おうと思ったはいいものの、言い出しにくくて俯いてしまう。下げた視線の先にえんまが回りこんできて、目が合う。さらに気まずい。

「早く言えーっ!」「うーん……。その、な?」

 

「カマギリ、じゃなくて、怜恩、で……いいよ。」

 

「…………。」えんまは口をぽかんと開けたままフリーズしてしまった。

「え、えんまさん?」え、なに。なんかダメだったぽい?

「……は。」「!?」「あははっ!? カマギリそんなこと!?」笑われてしまった。

えんまは笑いながら棚と棚の間を駆けていく。通路の一番奥まで行ったところで何かに気づいた様子で取って返す。

 

「怜恩、だったね。」

 

えんまは唇に人差し指を当てて微笑む。

また通路を引き返して、曲がり角を消えていった。

「朱肉買うんでしょー?」となりの棚の影から小さい手がピョコっと顔を出す。

昼はどうしようかな、とかどうでもいいことで頭を埋めてしまいたい。

頭が熱でガンガンする。

 

ほんと、どうかしてるぜ。

 

二十八冊目fin.

やっと書き上げたぞ……。

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