歪曲骨家。

創作小説置き場です。

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私立永遠星学園高等部生徒会資料29

二十九冊目

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「なんてこった……。」

家に帰って、えんまから渡された袋を開けたところまではいい。

問題は中身だ。

「えんまのやつ、袋を渡し間違えたのか……?」

『はい、どーぞ。』いや、えんまはレジから袋をそのまま持ってきた。はずだ。

俺がよく見ていなかっただけかもしれない。自信がない。

「とりあえず、メールでもしてみるか……。」

 

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部屋の隅から軽快なメロディが響く。えんまからのメールだ。

携帯を開いてメールを確認する。どうやらえんまは今日、制服を買いに行くらしい。本当なら僕も買いに行かないといけないんだけど、今日は生憎立て込んでる。

さらにメールをスクロールさせていくと、なぜか服の写真が添付してあり、『どっちがいいかな?』とある。迷っているみたいだ。こんなこと僕じゃなくて鎌切くんに訊いたらいいのに。まぁ、えんまと鎌切くんがあんまりにも仲良くなるのは望ましくないけど。

えんま宛のメールに『黒い方がいいんじゃない? 意外性あると思う。』と打ち込んで、送信。程なくして、『ありがと。』と返ってきた。

再び携帯を部屋の隅にやって、演説用の白装束に着替える。

「そろそろです。」ノックの音と共に、ドアの向こうから低い声が聞こえる。

「分かっている。」演説用の口調で答えながら、白装束のフードを目深にかぶる。

人々、特に僕から遠い人物は、僕が影武者で、えんまが本物だと信じ込んでいる。

僕が本物であると知っているのはごく少数の人間だ。

 

えんまは、知らない。

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

花鳥率いる教団『雪月花』は、元は孤児院のようなものだった。

あーしも孤児院だった時代に拾われて、今の教団になった時には幹部にもしてもらえた。今でもたまに子供が拾われてくるし、やっていることは孤児院とあまり変わらないかもしれない。

幹部のほとんどは孤児院の時代に拾われた子供だし、教徒の多くも子供だ。そして教祖である花鳥も、おそらくは子供。教祖様はいつもフードを目深にかぶっているし、ゆったりとドレープのかかった服をいつも着ているから、体型もよくわからないけど。そういえば性別もわからない。この間訊いてみたけど、『ミステリアスな方がいいでしょ。』とか言って躱されてしまった。

教祖様は自分のことをあまり話したがらない。その代わりに、お姉さんのことをよく話してくれる。教祖様のお姉さんは、極めて普通の女子校生らしい。時代劇が好きで、栗色の髪をしていて、よく笑うらしい。

教祖様はお姉さんのことを話すときだけ、少しだけ笑みをこぼす。子供みたいに無邪気で、教祖をしている時には見せない顔をする。そんな時だけは、心が休まるといった風に。

あーし的には家族なんて、自分の邪魔をする存在でしかなかった。

だから教祖様が羨ましい。

頑張ればどうにかなるとか、好きになったらいいとか、そんなことじゃない。そんな単純なことじゃない。一度へし折れてしまった心は、簡単には戻らない。

少しでもマシになればいいな、と思う。

だから此処にいる。

帰るところは、此処しかないから。

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 「あれ……。」知り合いの声が聞こえたような気がして、顔を上げる。慌てて辺りを見回すが、それらしい人影は見当たらない。

「どしたでござるか?」木白が覗き込むように、というか見上げるように訊ねる。

「あ、ううん。何でもないんよ!」胸の前で手を振りながら答える。木白は小柄な体を更に縮こまらせながら、「気になるでござるよー!」うちの周りをぐるぐる回る。

「ほんと、気にせんでええって!」苦笑しながら木白の頭を撫でる。学校では毅然と(?)振舞ってはいるが、木白にもこんな一面があるのかと少し嬉しくなった。

「むぅー。」首を引っ込めて木白が唸った。そんなところは低身と相まって小動物らしい。

「今日はさ、純粋に楽しも!」「クレープおごりやがれでござる。」「木白はうちを何と勘違いしとんのや。」「御食は御食でござるよ!」「く、曇りなき眼で見つめるんやない!」「きらきら。」「お、おごらへんで!」「ぴかぴか。」「負けるなうち!」「てかてか。」「……何味がいい?」「真顔で訊くなでござる。」「いちご?」「怖いでござる!」「いちごね、オッケ。」「待つでござる!」「なんか文句あるんか?」「お、おごらなくていいですよ、はい。」「やった!」「……ッ! これが狙いか!!」「ぽんぴん♪」

 

楽しい日々は、続くんだよ。

いつまでも、いつまでも。

伝えたいな、君に。

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

送信ボタンを押す。

一瞬でこの端末は世界とつながって、メッセージを届ける。

想像もできないような膨大な量の情報がやり取りされて、ディスプレイを彩る。

きっとこの世界で俺が知っていることなんて、ほんの少しなんだろう。人間は自らが生み出した情報を、時代が進むにつれ蓄積されていく情報を、全て知ることはできない。例外なんてない。みんな、そうだ。

 

考え事をしなが返事を待っていると、耳元で着信音が鳴る。新着メールを確認すると、『間違ってないよ。』とだけあった。間違ってない、ということはえんまの手元にはちゃんとえんまが選んだ物があると言う事だ。

ん?

じゃあ、つまりどういう事なんだ?

えんまの手元にある物と、俺の手元にある物は同一ということか?

それとも、先に買ったものが気に入らなくて、あとで買ったものと交換したとか?

……いや、それは考えられないか。あんなにキラキラした目で見つめていたし。

考えれば考えるほどわからなくなる。俺の貰った袋に入っていたものは、えんまが最初に見ていたペンダントで、えんまが持っている袋には、何が入っているのだろう?

 

まぁ、なんでもいいか。えんまが喜んでるんなら。

俺はそっとペンダントを壁の画鋲にかけた。

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

「あーーー、つまんね。」黒く塗り潰した長い爪を弄びながら、世亜はひとりごちた。

「直にあなたにも出番が回ってきますよ、雑魚ですからね。」

いつから居たのか那由他が口を挟んできた。腕を組みながらカツカツと靴音を響かせて歩いてくる。

「あん? 今なんつった!」「雑魚、と。」「てめえのが雑魚だろーが!」「私は雑魚ではありませんよ。なぜならまだ出番が来ないからです。」「出番がある俺のがむしろシーラカンスだろ!」「ラスボスはラストにいるからラスボスなのです。」「意味わかるように言えよ!」「まったく、残念なオツムをしていますね。」「オツムってなんだよ、説明しろ!」「面倒なので嫌です。」「なんだよお前!」「感嘆符ばかり使わないでもらえますか。うるさいので。」「あん? 俺の話すことに文句つけんなや!」「私があなたの監視役だということをお忘れですか?」「年下のくせに威張るな!」「すみませんでした、おっさん。」「うっぜえええええええ!」「あなたの感嘆符の方がよっぽどうざいです。」「もういい、知らん!」「あなたに知られる筋合いはありません。」「ああああああああああああああ!」「叫ばないでいただけますか、いくらこんな構造とはいえ、近所から苦情が来ますよ。」「どこに教団に苦情付けるご近所さんがいんだよ!?」「まぁとにかく、あなたは雑魚ということです、OK?」「のおおおおおおお!!」「喉潰れますよ?」「誰のせいだと思ってんだ!」「もちろん、私、ですよね。」「確信犯だ!?」「人は私を、『どえす』と呼びます。」「へぇーえ。」「感嘆符付けるの、やめましたね。」「いい加減めんどくさくなってきた。」「では私は帰ります。」「唐突だな。」「良き夢を、おやすみなさい。」「永眠してろ。」「ふふふ、では。」

小さく手を振って那由他は来た時と同じように靴を鳴らして歩き去っていった。たっぷり10分程好き放題いっておきながら帰るときはやけにあっさりだ。話し方も落ち着いていて年増っぽいし、薄気味悪く微笑む顔は裏しか感じさせない。モノトーンで統一した服装もシックだし、ヒールは低いがよく響く靴は余裕を感じさせる。

気に入らねぇ。

態度も、風貌も、口調も。そして、能力も。

 

長い爪の先をカチカチと擦り合わせながら、世亜はつぶやいた。

「……気に入らねぇ。」

 

二十九冊目fin.

さぁ、新キャラも出てまいりまして、はい。にっぎやかぁ。

作中はさほど賑やかな展開でもありませんが。(笑”

最近はほとんど更新してませんでして、すいません。

いやぁ高校生って忙しいですね!!

AUTHOR: niyanko-222 IP: 219.121.217.229 DATE: 09/04/2013 19:26:04 やー! 書いてたやつ消えたったァ!!
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Comment

ab-kanade-love-07-01  

久し振りの更新キマシタワーーーーーーーー!
あ、お久

2013/07/22 (Mon) 11:47 | EDIT | REPLY |  

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