歪曲骨家。

創作小説置き場です。

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九月一日『エピローグ』

 九月一日。快晴。

 チャリを飛ばしてはやめに学校に向かう。人通りの少ない廊下を走り抜けて階段を二段飛ばしに上る。先人が足拭きマットの裏に隠していってくれた屋上の合鍵を使って、扉の鍵を開け、外から鍵をかけ直す。梯子を上って貯水タンクの陰に座り込む。傘立てからくすねてきた母の日傘を立てて日差しを遮り、そこでようやくひと息ついた。
「……あっちい。」
 全力疾走と見つからないように周りに気を配りながらここまで来たせいで汗だくだった。うちわも持ってくるべきだったかもしれない。シャツをバタバタしながら下敷きを探すが、始業式には必要ないからと入れなかったのを思い出した。
「くっそ、昨日の俺……。」
 水筒にたっぷり入れてきた冷たい茶を口に含む。そのままうがいの要領で口の中を冷やした。水筒を入れてある保冷バッグには、始業式の後勉強会があるからと言って作ってもらった弁当もある。打ち上げの予定は午前十一時だが、万が一長引いてもいいようにだ。四階建ての校舎からは低い山の稜線と、ぽつぽつと建つビル、田んぼと、家と、それから人がいっぱい見えた。今までは屋上に来ても頭上を見るばかりで下なんてこれっぽっちも見たことなかった。
「見えるかなぁ、ロケット。」
 午前七時半現在は雲も少なくて見晴らしもいいが、三時間半後はどうなっているやら。
「始まったな、始業式。」
 下から微かに校長の話す声が聞こえる。時計を時々確認しながら雲を数えたりタイルを数えたりして暇をつぶす。一時間くらい経ったかな、と思って見た時計はまだ十分しかたっていない。携帯のアラームをかけて少し寝ようかとも思ったが、固いコンクリート、日傘で防いでいるとはいえ強い日差し、熱中症待ったなしだ。大人しく起きて待つ。ひたすら待つ。
「お。」
 十一時だ。海の方向に目を移す。ちょうど目の前のビルとビルの真ん中のあたりから見えるはずだ。しばらくして真上に向かって伸びるロケット雲が見えてくる。中空に漂う雲を突き抜けて、そのあとはよく見えなかった。
「ちゃんとくっついてっかな。」
 ロケット雲を写真に収めて、早めの昼食にする。サンドイッチだった。始業式もホームルームも終わったようで、玄関から出ていく生徒たちの姿がちらほらと見えた。冷えたサンドイッチがうまく喉を通らない。
「約束したからには守れよ。」
 見上げた空に輝く太陽が目を焼いて、緑色の斑点が視界を舞った。
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