歪曲骨家。

創作小説置き場です。

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八月二十八日『肉まん』

 八月二十八日。雨。

「ウーミ?」
 テレビでたまたま流れていた海水浴場の映像を見て目を輝かせる。燦々と照る太陽のもと、カラフルなパラソルや浮き輪、水着の人々が映っている。海の家で焼きそばを売る様子も放映されていて、思わず唾を飲む。
「今日は雨だぞ。」
「明日は晴れなのデス。」
「お前は見つかったらまずいだろ。」
「むゥ……。」
「プライベートビーチなんかがあればよかったんだけどねぇ。」
「そもそもここから海ってかなり時間かかるじゃん。」
「ふむゥ……。」
「お前だって観光に来たわけじゃないんだろ。」
「じゃあ今度観光に来るのデス。」
「目立たない色で来いよ。」
「わかってるのデス。」
 行けない海の様子を流していても空しいのでチャンネルを変える。変えた先は料理番組で分厚いホットケーキを焼いていた。出来上がりにバターをのせてメープルシロップをかけているところで腹の虫が耐え切れずに音を立てる。画面内のデジタル時計はちょうど十二時を指しており、正確すぎる腹時計に半分呆れかえった。
「ご飯にしましょうか。」
 祖母が手に握ったタイマーを見せながら言う。音が鳴る前に止めたようだ。
「今日はちょっと手抜き。肉まん。」
「ニックマン?」
「肉の饅頭……って言っても伝わらないか。まあ食えばわかるよ。」
 席について肉まんの登場を待つ。すぐにほかほかと湯気を立てる皿がやってきた。あちあちとジャグリングしながら冷ます。裏紙を剥がしてかぶりつく。
「あひっ。」
 餡の方が熱いのをすっかり忘れていた。麦茶で舌を冷やす。火傷したかもしれない。
「ヒノちゃんも熱いから気を付けてね。」
「ハイなのデス。」
 ふたりは肉まんを半分に割って中の餡を冷ましてからかぶりついていた。先に言ってくれよ。充分に舌を冷ましてから二口目に挑む。もちもちの皮とジューシーな餡が絡み合って何とも言えない旨さだ。暑い日に熱いものを食べる醍醐味みたいなものを感じる。
「ひとりだとあんまり肉まん食べる機会ないのよね。」
「そうなの?」
「五個入りだから食べきれないの。ヒロちゃんでも来ないとね。」
「そっか。」
「ヒノちゃんもね。」
「ハイ。」
 剥がした裏紙を皿の上に重ね、一斉に手を合わせる。
「「「ごちそうさま。」」デス。」
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