歪曲骨家。

創作小説置き場です。

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八月二十七日『絵』

 八月二十七日。曇り。

「お前の本来の姿? ってどんなんだよ。」
「青くてかわいいサイみたいな感じなのデス。」
「青くてかわいいサイ……。」
 理解に苦しんでいる顔をしていたら、ノートに図解してくれた。確かにサイのような特徴的な角、とろんとした目元はかわいいと評することもできる。線を引っ張ってミミズが書いてあるがたぶん青いと書いたのだろう。
「お前、絵うまいんだな。」
「そうデス?」
「字はミミズのくせに。」
「これはこういう文字なのデス。」
「どーかね。」
「文句があるならヒロトも絵を描けばいいのデス。」
「言ったな? 理科と美術は常に五だ。」
 とはいえ同じ対象を描かなければ比べられないので、画題協議に入る。
「何描く?」
「そーデスネ……。」
「あら、何してるの?」
「お、ばあちゃん。なんかいい画題ない?」
「画題? そうね、おやつのアイスクリームなんてどう?」
「溶けちゃうのデス。」
「溶ける前に描けばいいのよ。」
「スピードも競うわけか。」
「なるほどデス。」
「私も参加していい?」
 というわけで食卓で写生大会が始まったわけだが、アイスをスケッチとはかなりハードルが高い。溶けないうちに食べなければという焦り、容赦なく溶けて形を変えていくアイス、水色頭には負けられないというプレッシャー。おまけに開始数十秒でアイスを食べている祖母。もう描き終わったの? 器に盛られた丸いバニラアイスが潰れてドーム状になったあたりで描き終わり、柔らかくなったアイスを口に運ぶ。半分くらい液体になっていた。隣の彼女も同じくらいに描き終わったようでスプーンに手を伸ばしている。食べ終わった祖母は器とスプーンを再びテーブルに戻し、スケッチブックを手に取る。
「ばあちゃん、今から描くの?」
「アイスクリーム、は、先に描いたわ。」
「器を描き足すのデスネ。」
「あっ、え、そんなんありかよ!」
「アイスクリーム、は、先に描いたもの。」
「ぐ、そんなん、強い……。」
 できた絵を見せあったけれど、祖母が圧倒的にうまかったのでなんかいろいろどうでもよくなった。
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