歪曲骨家。

創作小説置き場です。

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八月二十四日『日記』

 八月二十四日。曇り時々雨。

 中学二年にもなって夏休みの宿題で日記を書かされるなんて思っていなかった。そういうのは小学三年生で卒業じゃないのか。もちろん夏休みが終わって提出するためにこの日記を書き始めたわけだけど、途中から、というよりかなり序盤から彼女のことが書いてあるので提出できなくなった。なぜって、こんな日記を提出すれば俺か祖母か両方かの頭を疑われてしまう。だからこの日記はただの記録。忘れないと思うけど、忘れても思い出せるように。
「何を書いているのデス?」
「どぅわっ!」
 反射的にシャーペンを持つ手ごとノートを閉じる。芯が折れる嫌な感触が伝わってきた。
「なな何ですかねヒノさん。」
「だから今何を書いていたのデス。見せるのデス。」
「いやこれはちょっとお見せできないというか、おいこらやめろって。」
 ページをめくろうとする手を引っぺがしてすぐさまノートを引き出しに放り込み鍵をかける。
「何かやましいことでも書いてたのデス。」
「違うわ。日記は人に見せるもんじゃないの。」
「ニキ?」
「日記。その日あったこととか書くんだよ。」
「じゃあ別に見ても問題ないのデス。」
「良くねーよ俺が。」
「やっぱり何か変なこと書いてたのデス。」
「違うっつの、あーその、恥ずかしいから、言わせんな。」
「ヒロトはもう充分痴態を晒してきたのデス、今更どうってことないのデス。」
「痴態は一個でも減らしたいだろーがよ……。つかそんなに晒してねえし。」
「そうデス?」
「そうですー。」
「何でもいいデスガ。」
「ノートやるからお前も日記書いてみれば。」
「地球語は書けないのデス。」
「お前が読めりゃいいんだから火星語でも何でもいいんだよ。」
「ふム。」
 味気ない五冊パックのノートを一冊渡し、鉛筆を握ると早速何か書き始めた。覗き込んでみるとミミズが這ったような図形がページを埋め尽くしていて、どこで区切るのかさえ分からない。盗撮は犯罪なのでそのミミズ文字を丹念にスケッチし、右下に火星語、と書いておいた。
「それとヒノは地球語、読めないのデス。」
「え、じゃあ日記見てもわからないじゃん。」
「……だから見せてもいいのデスヨ?」
「なんだそれ、尚更見せねーよ。」
「ケチなのデス。」
「ケチで結構。ダメなもんはダメー。」
「じゃあトウコさんに読んでもらうのデス。」
「おい待て冗談ですよねヒノさんそれだけはやめて。」
「ヒロトはすぐ焦るから面白いのデス。」
「俺はこれっぽっちも面白くねーよ……。」
 だんだん図々しさが増してる気がするのは俺だけだろうか。
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