歪曲骨家。

創作小説置き場です。

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八月二十一日『写真』

 八月二十一日。溶けそうなくらい暑い。

「あとちょっとだな。」
「何がデス?」
「お前がここ出てくまで。」
「ハイ。」
 ここにいろ、と言うのは簡単だ。でも、実現は難しい。俺だって養ってもらっている身で、稼いだ金も稼ぐあてもない。それに夏休みが終われば俺は実家へ帰っていくわけで、両親に事情を説明するのも、祖母に彼女を押し付けるのも、どうなんだろう、と思う。そもそも俺の一存で彼女に星を捨てさせるのは、何か違う。
「写真撮っといてもいいか?」
「シャシーン?」
「写真は、あれだ、映像記録だよ。」
「ふム。わかったのデス。」
「じゃあそこ立ってて。」
 携帯をカメラモードにして構える。……写るよな? 霊体とかじゃないだろうし大丈夫か。プレビュー上は大丈夫そうだ。シャッターを押す。
「ギニャ!」
「うおっ。」
 真っ白な謎物体が撮れた。何だこれ。輪郭はなんとなく人型っぽいが、まるで発光しているかのように妙に白い。まさか祖父を撮ってしまったのか。
「おい、これなんだと思う……なんで目ぇ瞑ってんだ。」
「眩しかったのデス、その、シャシーンの機械ガ。」
「眩しい? ああ、フラッシュ焚いてたか。」
 目が慣れるまで待って、謎物体の写真を見せる。
「宇宙服の全反射かもしれないのデス。」
「反射すんのかよ、見えないのに。」
「明確にこちらに向かっている光だから可能性はあるのデス。」
「ふーん。まあフラッシュ焚かなきゃいい話だな。」
 フラッシュをオフにして再度撮影する。今度はちゃんと撮れたが若干ピンボケしている。
「すまん、もっかい。」
 確実にピントを合わせ、ナイスなタイミングでシャッターを押す。やっぱりボケている。
「なんでボケるんだよ……遠すぎるのか?」
 全身を収めるのを諦めて近寄る。腰から上だけを撮影してみたがやはりボケる。
「景色はちゃんと撮れてんだけどなー。」
 人型だけボケるなんて余計な機能はついていないはずだが。この携帯でひとを撮ったことがないからわからない。
「ちょっとこっち来いよ。」
「何デス。」
 肩を組んで裏返した携帯を構える。腕に当たるぷよぷよがひんやりしていて気持ちいい。ボタンがどこにあるかわからなくて手間取る。ようやくシャッターを切れて、撮った写真を確認する。自分のしかめっ面と、ボケた彼女が写っていた。
「なんでお前だけボケてんだよ……。」
「やっぱり宇宙服のせいなのデス。微生物の集合体である宇宙服は表面が均質じゃないのデス。」
「肉眼だと別に問題ないぞ。」
「補正されてるのデス。」
「そーなんか。」
 何にせよ宇宙服を着ている限りシャープな写真は撮れないということか。仕方なくボケたままのツーショットを保存する。SDカードにもバックアップを取って、お気に入り設定をして削除不可にする。
「もうちょっとだな。」
「それはさっき聞いたのデス。」
「うん。」
 少しは名残惜しそうにして欲しい、なんてのは俺の我儘だろうか。
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