歪曲骨家。

創作小説置き場です。

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八月十九日『空と』

 八月十九日。再び星見びより。

 この間は雲が出てきてしまったため満足に見られなかったが、今日は晴れ渡っている。綺麗に拭いておいた望遠鏡を持って、外に出る。砂利の隙間に差し込むように三脚を広げ、ネジを締めて固定する。ひと息ついたところで後ろから足音がすることに気づく。
「ヒロト。」
「お前かよ……。」
「何だと思ったのデス?」
「何でもいいだろ。ていうか、外では別に裸足じゃなくていいんだよ。」
「いちいち脱ぎ履きするのは面倒なのデス。」
「あっそ。」
「母星は見えるのデス?」
「この時間じゃ無理だな。」
「おすすめの星はあるデス?」
「おすすめ? あー、今日だと月かな。満月は昨日だったけど。」
「丸いのデス。」
「そうだな。」
「美味しそうなのデス。」
「……そうか?」
「そうなのデス。」
 美味しそうの基準がちょっと違うのかもしれない。俺にはよくわからない世界だった。中腰で望遠鏡を覗き込む背中をそっと小突いてやりたい衝動に駆られるが、望遠鏡の被害が大きそうなので踏みとどまる。ちょうど彼女が顔を上げたので交代しようとしたら、振り返った拍子に手かなんかが当たって固定したはずの望遠鏡はいともたやすく倒れる。支えようとした手は届かない上にバランスを崩して彼女もろとも倒れ込む。
「お、お、お前なぁーーー!」
「な、何デス、こんなに簡単に倒れるとは思わなかったのデス!」
「どうしてくれんだよ俺の望遠鏡!」
「ごめんなさいなのデス!」
「いいよ許してやるよ!」
 望遠鏡を枕に砂利を布団に寝そべっているともうすべてがどうでもよくなってきた。背中も後頭部も尻も痛い。起き上がろうと手をついて、頭上に広がる星空を見て、寝そべり直した。
「……望遠鏡なんかなくてもさ、」
「ハイ。」
「星は綺麗だよな。」
「ハイ。」
 叫び声を不審に思った祖母が出てきて発見されるまで、寝そべったまま星を見ていた。祖母も誘ったがさすがに断られた。
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