歪曲骨家。

創作小説置き場です。

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八月十七日『パイナップル』

 八月十七日。南国風。

 今日はパイナップルの日らしい。目の前に鎮座する南国の果実を前に思う。
「どうやって食べんの、これ。」
 いわゆるカットパインではなく、なっていたのをそのまま持ってきた感じのパイナップルだ。
「スナックパインだから手でもぎって食べられるはずだけど。」
「もぎ……そうなんだ。」
 意外と可食部が少ないタイプのフルーツなんだな。
「芯はジュースにするから捨てないでね。」
「りょうかーい。」
「甘いのデス?」
「んーまぁ、甘い、な。ちょっと酸っぱい。」
「すっぱ……。」
「安心しろよ、あれ程じゃないから。」
 これで合ってるのか不安に思いながらもむしる。皮のひと粒の後ろに筋状の実がくっついている。皮の裏から身をこそげるようにかぶりつく。何というか、でかいトウモロコシを食べているような気分だ。
「ん、うまい。」
「甘いのデス。」
 むしむしと次々に口に運ぶ。舌がピリピリしてきたし喉はイガイガするけど美味しい。あっという間に芯だけが残った。
「ピリピリするのデス。」
「そうだな。」
 芯を祖母に引き渡して、果汁でぺたぺたする指を舐める。甘い。
「……お前、手袋したまま食ってたの?」
「どうやらそのようデスネ。」
「どうやらそのようですねじゃないよ……。」
「何かまずかったのデス?」
「どうやって洗うんだよそれ。明らかに革っぽいじゃん。」
「……。」
「…………。」
「まぁ何とかなるでショウ。」
「うん……とりあえず拭いとけ。」
 おしぼりを渡す。焼け石に水感はあるがしないよりはましだろう。台所でブーンという機械音が響き渡り、しばらくしてグラスを持った祖母が現れる。
「はい、パインジュース。」
「ありがと。」
「ありがとうなのデス。」
 クリーム色の液体が入ったグラスはよく冷えている。ぐっとあおると、甘味と冷たさがいっぺんにやって来て、舌に楽しく喉に涼しく、端的に言えば旨い。
「実より甘いんじゃないの?」
「砂糖とかは入れてないし、そうみたい。」
「じゃあ缶詰にするときに捨てるのってめっちゃもったいないじゃん!」
「レアなのデス?」
「レアだよ。缶詰パインって真ん中ないの。」
「ほウ。」
「スペースも無駄だし芯も入れとけばいいのに。」
「固くて食べづらいんでしょう。」
「あー、そっか。」
「缶詰ピーナポはドナツ型なのデス?」
「そうそう。こんなやつ。」
 両手で輪っかを作って示す。そのとき彼女が一瞬複雑な顔をしたような気がしたが、気のせいかと思って腕を下ろす。グラスのパインジュースを飲み干しても、喉のイガイガは取れなかった。
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