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八月十六日『宇宙飛行士』
 八月十六日。快晴。

「宇宙飛行士ってさ。」
「ハイ。」
「飛んでるじゃん。」
「ハイ。」
「どんな感じ?」
「飛んでるって感じなのデス。」
「……うん。」
 祖父も今頃ナスかキュウリの馬乗って飛んでるのかと思うとちょっと羨ましくて、でも祖父は残念ながら俺には見えないから、見えてる宇宙人に訊いてみようと思ったのだけど。
「自分で飛んでみればいいのデス。」
「宇宙飛行士になって? 違うんだよ、なんか。」
「なんかって何デス。」
「宇宙飛行士になった時ってすげえ未来じゃん。俺は今飛びたいんだよ。」
「無理なもんは無理なのデス。」
「感覚共有とか出来ないのかよ?」
「ヒノを何だと思ってるデス?」
「宇宙人だと思ってるよ。」
「ソーデスカ。」
 黒手袋の手が汗をかいたグラスを持ち上げて、残っていた氷もろとも麦茶を流し込む。
「宇宙飛行士なんて、そんなにいいものじゃないのデス。」
「うん。」
「帰ってこられる保証があるなら、もっと、ずっとよかったのデス。」
「……お前はさ、」
 やっぱり帰りたいんだな、と訊こうとして。帰りたいに決まってる。知らない星に置き去りにされて、すべて運任せにするしかなくて。彼女が捨ててきたものを全部持ってる俺が言っていいことなんてひとつもない。ないけど。
「ここだって家にしていいんだよ。」
「……ハイ。」
 赤々と沈んでいく夕陽を眺めながら、氷を噛み砕いた。
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201608162152
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