歪曲骨家。

創作小説置き場です。

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八月七日『朝顔』

 八月七日。日照り朝顔。

 祖母の小さな畑には、野菜の他に朝顔なんかの花も少しある。昨日は蕾だったが、今日はいくつか青い花弁を広げていた。
「丸いのデス。」
「朝顔って花だよ。朝咲いて、夕方にはしぼんじゃうの。」
「短命なのデス。」
 この朝顔はちょうど窓から見られる位置に植えてあり、緑のカーテン的役割も果たしている。効果のほどは……よくわからないのが本音だ。田舎とはいえ電気はちゃんと通っているし、クーラーは動いているし。
「蕾と花の色が少し違うのデス?」
「え? ……本当だな。」
 言われてみると蕾は花より若干赤みがかっている。紫陽花は土の酸度によって花の色が変わるらしいが、朝顔はどうなのだろう。
「全然話違うけどお前の眼、それって生まれつきなの?」
 黄金と海色のオッドアイを指して言う。寄り目になった。
「ヒノはもともと皮膚の青い生物、この配色は擬態の一種なのデス。」
「擬態とか出来るのか。」
 結局地球ではかなり浮いてるけどな、その擬態。
「色素成分の分配都合上、どこかに偏るのは仕方ないのデス。」
「ふーん。」
 彼女が持っている色素が圧倒的にシアンだったってことだろう。染めたり脱色したりは視野になかったのだろうか。戻るときに不便なのかな。
「変色出来るアササガーオはすごいのデス。」
「そうだな。」
 朝顔の前にしゃがんで動かない彼女の上からバケツプリンクラーで水をやる。どうせ濡れないのだから文句はないだろう。コロコロと水滴が空中を滑っていくのを眺めていると、彼女がいきなり立ち上がる。そしてバケツプリンクラーに頭をぶつける。バケツプリンクラーが傾く。結果として俺がずぶ濡れになり、彼女は頭を抱えて再び座り込んだ。
「おいお前……。」
「ヒノは被害者なのデス……。」
「そもそも何でいきなり立ち上がるんだよ。」
「ヒロトが水かけてくるからかけ返してやろうと思っただけデス。」
「お前濡れないから別にいいだろ。」
「宇宙服が溶けたらどうするのデス。」
「えっこれ、水で溶けんの?」
「溶けませんケドネ!」
「何なんだよお前!」
 彼女が犬のようにトルネードして残りの水滴をかけてくる。そしてそのまま家の中へすっこんでしまった。
「何なんだよあいつ……。」
 残されたのは空のバケツプリンクラー、ほとんど水をもらってない朝顔、ずぶ濡れの俺。
「本当何なんだよ……。」
 仕方なくバケツプリンクラーに水を汲み直して、朝顔を潤す。蛙が一匹、葉の陰から飛び出てきた。
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