歪曲骨家。

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八月四日『隣の隣』

 八月四日。星見びより。

「お前さ、どっから来たの?」
「ヒノ。」
「……ヒノ。」
「そんなに聞きたいなら教えてやらなくもないデスガ。」
「へーへー、聞かせてください。」
「ヒノの母星は×××××、この辺りでは金星と呼ばれている星デス。」
「は?」
「聞こえなかったデスカ、びーなすデス、あふろでぃーてデス。」
「いや、だって、お前、金星に生物はいないだろ……。」
「信じたくないならそれでもいいデスガ。」
「あーイヤイヤすいません信じますそこんとこ詳しく。」
「確かに金星の表面には生物はいないのデス。」
「……そうだよな。」
「ヒノ達は金星の中にいるのデス。地殻の裏側……遠心力で貼りついているようなものなのデス。」
「……つまり、地殻と、マントルや核の間に隙間があるってことでいいのか?」
「全球がそうなっている訳ではもちろんないのデスガ。」
「金星はもともと大気が厚すぎて太陽光が地表に届かないっていうしな……。それに加えて裏側なら紫外線でやられる心配もないわけだし、水がなくても風があれば……、おあつらえ向きにスーパーローテーションなんて強風も吹いてるわけだし……。いやしかし有機物は……。」
「何をぶつぶつ言ってるデスカ。」
「金星に生物が存在する可能性について考えてた。」
「結論ハ?」
「いてもおかしくない。かもしれない。可能性も無きにしも非ず。」
「ここにいるですケドネー。」
「これは世紀の大発見だぞ。将来俺はJAXAに入って金星の研究をする。」
「せいぜい頑張るデス。」
 そっぽを向いて俯きながら毛先をいじっている。母星のことを話す彼女はなんだか寂しそうで、このときはまだホームシックか何かだろうと思っていた。彼女がネックウォーマーを取ろうとしないのも、いるのか知らないが家族について話そうとしないのも。その理由を知るのはもう少し後。

「そうだ、今日は金星と月が横並びになるんだってよ。」
「そうなのデスカ?」
「まぁ明るすぎて全然見えないと思うけどな。」
「そうデスカ……。」
「見るだけ見てみようぜ、お前ならもしかしたら見えるかも。」
「視力に自信はないのデス。」
「別に今日じゃなくても、これからいつでも見れるけど。」
 彼女がいつまで地球にいるのか、どうして地球に来たのか、何も知らなかった。何も知らないで、無責任なことを言った。
「ヒノは。」
「うん。」
「ヒノは、初めて、星空というものを見マシタ。」
「……うん。」
「遠ざかっていく母星は、とても、綺麗デシタ。」
「…………うん。」
「ちゃんと、ちゃんと目に焼き付けておいたのデス。」

『もう外からの母星なんて見なくて済むように。』

「近くで見れば、もっと、綺麗なんだろうな。」
 これ以外、何も言えなかった。
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