歪曲骨家。

創作小説置き場です。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

八月二日『宇宙人』

 八月二日。霧雨スプリンクラー。

 宇宙人を拾った。
 海色の髪をして、人形みたいに白い肌をして、小学生みたいに背が低くて、驚くほど軽い。小学生を担いだことはないからわからないけれど、本当に中身があるのかと疑ってしまうほどに軽かった。人間離れしているのは見た目もだけれど、それより何より、彼女?を包んでいる何か。彼女?に触れようとすると、明らかに間に見えない物質がある。ぷよぷよしていて、しっとりしていて、ほんのり冷たい。
 草むらにあった部品らしき欠片は拾えるだけ拾って、大きすぎるものは埋めてきた。草も元通りとはいかないけど、ある程度立てておいた。
 そして木から落ちた子を拾ったと言って祖母に部屋を借り、彼女?を布団に横たえたところまでが昨日の話。

 祖母と交代で彼女?の様子を見ていたけどまだ目覚める気配はない。朝食後は祖母が様子を見、俺は畑の水やりに出た。畑と言っても猫の額くらいのもので、祖母が日々食べる野菜やらハーブやらを細々と作っている。バケツに無数に穴をあけたお手製のスプリンクラーで、乾いた畑を潤していく。白っぽかった土が黒く、葉についた水滴は光を受けてきらきら輝いていた。食べごろのミニトマトをひとつ収穫、軽く洗って口へ運ぶ。
「んまい。」
 バケツを片付けて家に戻る。屋根の下に入るとすっと涼しくなるから不思議だ。
「ヒロちゃんや。」
 靴を脱いだところで奥の部屋から祖母の声がした。彼女?が目を覚ましたのだろうか。
「なに?」
「青い子が起きたよ。」
「おはようなのデス。」
 聞き知らぬ声。木琴が片言で話しているような感じだ。脱いだ靴もそのままに廊下を駆けて、開いた障子の隙間に飛び込む。
「あ……。」
 左右で色の違う眼、海と黄金。眠たげに半分閉じた瞼から覗くその両眼は、生きているのか怪しいほどの無機質感と、虚無への入り口かと思えるほどの奥行きをもって、視線を縫いとめて離さない。
「おはようなのデス。」
「……お、はよう。」
 飛び込んできた勢いはどこへやら、静に座り込む。布団から上半身を起こした彼女?は祖母よりさらに小さく見えて、このまま縮小して消えてしまうんじゃないかとさえ思えた。
「ヒアイズ地球でオケーですカ?」
「ヒアイズ……あー、オーケーオーケー。」
「シナイなる地球人諸君、おー、任務完了なのデス。」
「おー、よかった、ですね。」
「ヒノ。本名は××××デスガ。」
 本名の方は全く聞き取れなかった。およそ獣の咆哮のような何かだった。
「俺は、宇木、宙人。」
「ヒロト、デスカ。」
「こっちは俺のばあちゃん、天井塔子。」
「それはさっき聞きマシタ。」
「あっ……そう。」
 どういう原理で浮いているのかわからないぐるぐるの髪が顔の横で揺れる。よく見れば着ている服も妙だ。ネックウォーマーと手袋をしているのにヘソは出しているし、サスペンダーらしきものは肩からずり落ちてもおかしくないほどゆるゆるだ。
「おねえちゃん、宇宙人かい。」
「なっ、ばあちゃん!」
「星の外から飛来した人型生物を宇宙人と称するのナラバ。」
 たしかに露骨にタコ型ではないし、アメーバでもないけど。グレイみたいにおしい感じでもないけど。中身はどうか知らないが形だけなら完璧に人型だ。おかしいのは色くらいだ。ただその色は果たして宇宙由来なのか? 地球産だったりしないか?
「そうかい。ゆっくりしておゆき。」
「ありがとうなのデス。」
「信じるの?」
「私は自分の信じたいものを信じるよ。」
 信じたいもの。そりゃあヒノが宇宙人なら嬉しい。世紀の大発見だ。宇宙人というとしきりにチップを埋め込んできそうなイメージがあるが、今のところそういう兆候はない。あるいはもう埋め込まれていて、これは誘導された結論なのかもしれないけど。
 改めて言い直そう。
 宇宙人を拾った。
スポンサーサイト

Comment

Add your comment

Latest

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。