歪曲骨家。

創作小説置き場です。

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私立永遠星学園生徒会資料36

三十六冊目
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来週から着ようと思って用意しておいた上着が、まさか今週半ばから活躍するとは思っていなかった。教室内にはまだぽつぽつとカーディガンの者もいるが、カーディガンは中のシャツの袖がくしゃっとなるから好きではない。女子もタイツが増えてきて、冬の訪れを感じる。髪を切って、風呂上がりに乾きやすい髪にはなったが、少し首元が寒くなった。手を首に当てると、手の方が冷たくてびっくりする。今日は余裕をもって家を出たので走る必要はなかった。通学路になっている道を一人歩く。
「おはよう、鎌切。」後ろからの控えめな声に振り向く。
「はよ、鈴本。」鈴本はシャツにパーカーに上着と重装備だ。
「寒くなったな。」

「ほんとにな。おれ、ちゃんと冬越せるか心配。」

「大丈夫、パンダは恒温動物だから。

「喧嘩売ってんのか?」

「ごめんごめん。ま、もう少ししたら教室も暖房つくだろうし。」

今日からつけて欲しいくらいだけどなぁ。」

お前昔からそんな寒がりだっけ。」

「昔のこと覚えてない癖に。」

「いや、なんかこう……鈴本って暖かい感じだから?」

「ごめん、ちょっとよくわかんない。」

「うーん、何て言えばいいんだろ。」

「知らないよ。」

「わかったら言うわ。」

「別にいいよ。」緩やかに否定されて少し落ち込んでいると、校門の方から聞きなれた声が聞こえてきた。
「『蜘蛛の糸』でーす。よろしくお願いしまーす。」えんまがまたビラを撒いているようだ。
「最近は落ち着いてきてたのに……!」朝の仕事増やしやがって、と呟きながら走り出した。校門まではあと数十メートルだ。
「わりぃ、鈴本。先行く!」振り返って叫ぶ。鈴本は頷いてから手を振った。手を振り返しながら前に向き直る。眼前に迫る門の柱を掴み、勢いを殺さないまま敷地内へ駆け込む。



と、視界が白く染まった。続いて石鹸の香りが鼻を掠める。足がもつれ、バランスを崩したと思った時にはもう地面が目の前にあった。咄嗟に手を出して横の回転を加える。背中から接地し、致命傷は避けた。
「いってー……。」起き上がりながら、今しがたぶつかった(?)ものを確認する。
「大丈夫?」メイドが手を差しのべていた。
「もう驚かないぞ俺は。」えんまの差し出す手を押し退けながら、制服の土埃を払って立つ。
「? 別に驚かそうとしてないけど。」えんまは不思議そうに首をかしげた。その手にはしっかりとビラが収まっている。
「んなこた解ってるよ。ビラ! コスプレ! 禁止!!」えんまの携えるビラを指差しながら何度目かの注意をする。
「あと少しだから、お願い。」両手でビラを挟みながら拝まれた。
「仮にも生徒会の一員になったんだから、生徒会則は守ってもらう。」

そういうカマギリが守っている生徒会則の数はどれくらいなの?」

「守っている数の方が少なそうに言うな。」

「あっ、鈴本君おはよう。ビラどうぞ。」

「おいコラ。」

ビラはいらないけど、写真撮っていいですか、地獄谷さん。」

敷地内での携帯電話の使用禁止ー。」

「門の外から撮るから!」

私も門の外でビラ配ったらいいの?」

「だーめーでーすー。」

「「……ケチ。」」メイドとパンダに睨まれたが、これも仕事だ。そもそも鈴本はなんでえんまの写真撮ろうとしてるんだ。
「ねぇ、門塞がないでくれる?」声のした方を振り向くが、誰もいない。もう一度見てみると、非常に小さな「叩き斬るよ。」蛍が立っていた。
「……なんでわかったの。」

やっぱり不愉快なこと考えてたんだ。」

当てずっぽうで叩き斬るとか言うなよ……。」

何でも良いからそこ退いてよ。」

「あ? 何をそんな急いでるんだ。」

「君も少しは急げば? もうすぐ8時半だよ。」

「えっ。」慌てて時計を確認すると8時27分。靴を履き替えたり何なりを考慮すると、ホームルームが始まる前に2階の教室に辿りつくのは厳しい。それでも走るしかない。歩いて遅刻など言語道断だ。散らばった荷物をかき集め、玄関に向かって猛ダッシュする。後ろからメイドが追い付いて、追い越された。鈴本と蛍は走ると言うよりは歩いている。人を急かしておいて走らない蛍は一体どういうつもりなのか。実は足が遅くてあのスピードしか出ないということか。
「叩き割るよ。」耳元でささやかれた。いつの間にか追い付いていた蛍は、颯爽と俺を抜いて下駄箱ゾーンへ突入する。
「地獄耳かよ……。」足速かったし。空気抵抗が少ないからかな。
「叩き折るよぉ。」下駄箱の方から叫ばれた。なんで聞こえてるんだ。エスパーなの?
「鎌切ー……。」背後から弱々しい声がする。振り返るとぐったりした鈴本がよろよろと歩いていた。
「うわっ、大丈夫か?」下駄箱ゾーンへ入りかけたところをUターンして、鈴本に駆け寄る。
「おれ、もう無理……。」鞄を投げ出して、ふらふらしている鈴本の肩を支えてやる。
「なんで走ったんだよ。」右肩に鈴本を支えながら、左手で鞄を拾う。
「一人だけ遅刻って、嫌じゃん……。」チャイムが鳴った。二人して遅刻が確定する。
「わりぃ、置いてって。」てっきり蛍も歩いてくるものと思っていたが、時間のことを指摘したのは蛍だったことを思い出した。
「ううん、鎌切は優しいから……道連れ、ありがとう。」

こんなときにアレなんだけど、今すごくいい言い訳思い付いた。聞く?」

「おれが急に体調を崩したので介抱してました、でしょ。

「何でだよ、なんでみんな筒抜けなんだよ……。」

鎌切分かりやすいから。」

「まじかよ……。」

まぁ言い訳と言っても半分真実だし。」

「嘘は言ってないよな。」下駄箱から靴を出して履き替え、階段を上る。屈辱にもえんまのせいで今度こそ遅刻をしてしまった。おまけに転ぶし。えんまはと言えば、ぶつかった時にすんでのところで身を引いたようで、怪我どころか転んでさえもいなかった。超人的な身体力を目の当たりにする度に、本当に躯持ではないのか疑問に思う。
教室内はまだざわついていて、ホームルームが始まっているようには見えない。そっと後ろの扉から入ると、まだ担任は来ていなかった。鈴本を席につかせてから、自分も何食わぬ顔で席につく。斜め前のえんまが振り向いてVサインを送ってくるが、意味は分からなかった。相変わらず早着替えのえんまにとりあえずVサインを返すと、嬉しそうに前に向き直った。その直後に担任が教室に入ってくる。遅刻認定はされずにすんだ。鈴本は席で屍と化していたが、担任は特に気にも留めていない様子だった。
遅刻の問題がとりあえず片付いたが、えんまのビラ癖をどう直すか。ビラもよくないが一番駄目なのはコスプレだ。集客効果を狙ってのことだろうが、衣装のチョイスが毎回目のやり場に困る。
対処法を悶々と考えているうちに、ホームルームが終わった。



三十六冊目fin.

お久しぶりです、玻璃です。

課題終わりません……。

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