歪曲骨家。

創作小説置き場です。

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八月一日『飛来』

 八月一日。降砂。

「ばーちゃん、来たよ。」
 薄暗い玄関に呼びかける。ぺたぺたと足音が聞こえて、ガラリと引き戸が開く。俺より一回りも二回りも小さい祖母が顔をのぞかせた。
「よく来たねぇ、ヒロちゃん。」
「今年もお世話になります。」
「暑かったろう。さ、お入り。スイカが冷えてるよ。」
「やった!」
 言うなり靴を脱ぎ捨てて、思い直して揃え、鞄を片手に祖母の後をついて歩く。井戸水に浸けられていたスイカはキリリと冷たくみずみずしく、乾いた喉を潤すのには充分すぎる程だった。

 と、いう昨日の平和さが嘘に思えるほどの爆音で目を覚ます。咄嗟に目をやった時計は午前四時を指していた。大げさな目覚ましというわけではないらしい。障子を開けて窓の外を確認してみるけれど、どこかで黒煙が上がってるということはない。念のため反対側の障子も開けて確認してみる。
「うっわ、すげ……。」
 家の裏手の草むらから煙が上がっていた。音が大きかったのは単に近かったかららしく、爆発? の規模はそこまで大きくないようだ。隣の家とも百メートルは離れているため、野次馬がわらわら、ということもない。二階で寝ている祖母も起きてくる様子はない。
「隕石だったらどうしよ……。」
 着替えもそこそこに、縁側からつっかけで外に出る。煙の元からはあからさまにシューと音がしていて、時々パラパラと何かが降ってくる。
「あづっ。」
 爪くらいの大きさの欠片がつむじにクリーンヒットする。まだ冷め切っていないようで、払い落した手も火傷を負ってしまいそうだ。
「まだ近寄るのは止した方がいいか。」
 昼頃には冷めているだろうか。燦々と上ってくる太陽を見ながら、難しいかもな、と呟いた。こういうのは警察か消防に連絡するのが筋だろうけど。もし爆弾だとしたらこんな田舎を狙うのは不自然だし家に当たってねえし。何らかの物体が、空から、降ってきた、と考えるのが妥当だろう。隕石なら、もしそれが隕石なら、俺は第一発見者だ。
「隕石でありますように!」

■□■□■□■□■□
「朝の雷すごかったね。」
「雷? もう耳が遠くての。」
 やはり聞こえていなかったみたいだ。急いで焼きそばをかき込む。今日も客入りは芳しくないが、俺以外の誰かに先に見つかってしまっては意味がない。
「ご馳走様! お先に。」
「そんなに急いでどこ行くんだい。」
「ちょっとそこまでー。」
 事実、徒歩二分の草むらに用があるだけだ。一応虫よけスプレーを吹きかけて、スニーカーをひっかける。膝丈ほどもある草に足をくすぐられながら進んでいくと、わかりにくいがへこみがある。もう煙は上っていなくて、あたりにかすかに焦げ臭さが残るばかりだ。
「隕石かな。」
 恐る恐るへこみを覗き込む。
 バックステップでジャンプしてヒップドロップした。
 わかりやすく言うと数歩後ずさって尻餅をついた。
「う、」
 へこみの中心に横たわっていたのは、
「嘘だろ、」
 もちろんいくらか隕石のようなものもあったが、
「なんでこんな、」
 何より一番存在感を放っていたのは、
「宇宙人が!」
 海の色をした髪の少女だった。
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