歪曲骨家。

創作小説置き場です。

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私立永遠星学園生徒会資料38

三十八冊目
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「……申し訳ありません、教祖様。」暗い広間の中央に、双子とまとめて立たされる。
「それで?」教祖様は御簾の向こうで椅子に腰かける。
「地獄谷の……足が、」「右足が……折れたようです。」双子が私の後ろから報告する。
「無印の方は?」
「打撲程度かと……。」
「そう。3人かかってソレとは、先方もなかなかやるようだね。」
「……本当に申し訳ありません。」
「責めてるんじゃない。お前達はまだ使えそうだから、今日はゆっくり休みなさい。」
「ありがとうございます。」
「ありがとう……、」「ございます……。」
「それから双子は今日から新しい部屋に移るように。」
「はい……、」「わかりました……。」教祖様は椅子から立ち上がって、御簾の向こうの暗闇に消えた。それを見送ってから広間を後にする。廊下に出て突き当たりのところで、双子と別れた。
数歩歩いたところで、背後から双子の話す声が聞こえてきた。生憎と私には話し相手があまりいない。また世阿でもからかいに行くとしよう。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「阿弥……、」「如来……。」
「今日から、」「新しいお部屋だって。」
「嬉しいね、」「これからは、」

「「ずっと一緒だね……。」」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「おいテメエ!」
「何でしょう。」
「お前も所詮雑魚だったな!!」
「私が雑魚なら、貴方は超雑魚といったところですね。」
「あんだよ、双子の能力借りといてよぉ!」
「私は借りたくて借りたわけではありません。教祖様の采配です。」
「一緒だろぉが!!」
「貴方はまだその感嘆符をやめないのですか。」
「俺様の勝手だろ!!!!」
「あからさまに感嘆符増やさないでくれます?」
「あーもーうぜえぇぇぇえ!!」
「貴方の叫び声の方がよっぽどうざいのですが。」
「そもそもなんでお前ここにいるわけ!?」
「暇だったので。」
「教祖様に休めって言われたんだろ!!」
「貴方と話していると本当に疲れます。深く眠れそうですありがとう。」
「ハッ! 永眠してろ!!」那由多はこちらにくるりと背を向けて歩き出した。コツコツと足音が甲高く響く。その音を聴かないように耳を塞いでも、どこからか音は頭に直接流れ込んでくる。風に揺れる金髪を見ないように目を瞑っても、まぶたの裏にはっきりと像が写る。
「あーぁ、気に入らねぇ。」目を開いて耳から手を退けると、靴音も金髪もそこにはなかった。

 

「……あいつ、ありがとうって言ったか?」

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□■□■□■□■□■
生徒会とスケ部の合同合宿と言うのがあるらしい。今日はその説明会があったのだが、聞いているとただの日帰り旅行のようだ。旅費は集金制で、バスやなんやの手配も事前にされているらしい。生徒会メンバーとは何かと縁が深いので、こうしたイベントに参加できるのは嬉しい。
「御食さん!」後ろからの声に振り向くと、白水が手を降っていた。
「白水ちゃん! どないしたんや?」
「いえ、今度の合宿がスキーになりそうですって言っておこうと思って。」
「スキーかぁ。雪山は好きやで~、楽しみやな!」
「はい! 御食さんは滑れる方なんですの?」
「んー、走るのは得意や。」
「走る?」
「雪山をな、裸足で駆けるんや。気持ちいいで~!」
「あぁ、狐の姿でですね。」
「ん? せや、白水ちゃんは狐になれへんのやった。」
「みんななれませんよ~。」
「それもそやな。」
「もしよかったら、私と一緒にクロスカントリーしません?」
「くろすかんとりい?」
「林の中とかを専用の板をはいて歩くんです。」
「ほぇー! 楽しそうやな!!」
「じゃあ決まりですね!」
「「いえーい!!」」ハイタッチをして別れる。白水は来た道を戻って、教室に入った。ふわふわとマフラーが揺れる。冬休みが楽しみで仕方ない。

□■□■□■□■□■
次の朝、校門の前にえんまの姿はなかった。昨日のあの怪我だ、もしかしたら休んでいるかもしれない。ちょっと思い返すと脇腹が痛くなってきたので別のことを考える。冬休みの合宿。合宿と言うわりに日帰りだったり、ただ遊ぶだけだったり疑問だらけだが、先人が残して受け継いできたからには守る他ない。今年はスキーということで、ちょっとばかり遠出にはなるがそれなりに楽しめると思う。この時期になると3年生は引退しきっているので、滑っても問題はない。
うだうだ考えているうちに教室についた。今日は早めに来たのでまだ教室内のざわめきはさほど大きくない。後ろ側の引き戸を開けて、音をあまりたてないように閉める。

閉めきったところで、えんまと目があった。

「おはよ、カマギリ。」席に座ったまま手を振ってくる。
「はよ……、足は?」鞄を持ったままえんまの席に近づく。
「全治2ヶ月。」足元を見ると右足首には痛々しくギプスが巻かれ、床には松葉杖が横たえてあった。
「無理して学校来んなよ?」
「無理はしてない。家にいたってしょうがないし。」
「階段とかキツいんだろ?」
「そうでもないよ。たまに滑りそうになるけど。」
「何だよ、危なっかしい……。」
「大丈夫、見た目ほどじゃないから。」
「本当に無理すんなよ、絶対だぞ?」
「分かってる……ありがと。」
「何か手伝うことあったら言えよ?」
「うん……ごめんね、心配させて。もうすぐホームルーム始まるよ。」チャイムが鳴った。俺はえんまの席をあとにする。脇腹がぎゅっと痛んだ。

□■□■□■□■□■
えんまが足を折った。
そう聞いたときはどうしようかと思った。ギプスをつけたままじゃ壇上に上がれない。しばらくえんまの教祖は休みだ。必然その間の儀式は総て僕が執り行うことになる。仕事の量が単純に2倍になる。でも、えんまが松葉杖をついているのを見て、なぜだか少し勝った気がした。

本物の教祖は、僕だ。

ずっと勝ちたかったえんまの影にようやく勝てた気がして、僕は内心嬉しかった。一方で、えんまの方は勝負にすら思っていないんだと、僕自身の小ささを垣間見た気もして複雑な気分になった。妹を連れて行かれたときも、親が死んだときだってずっと隠してきた僕の小ささが、いきなり水底から沸き上がってきたような気がして吐き気を催す。
慌てて循環する思考を止め、自身に嘘を吐く。僕は『虚嘘(きょうそ)』だ。教祖だ。影武者だ。えんまの影だ。僕には、僕にはもう、何もない。

本当はずっと、ずっとずっとこんな自分が、嫌だった。

 

三十八冊目fin.

どうも、引き続き38でした。

久しぶりに挿絵を描いてみました、前回とのクオリティの差が歴然としていますね!

やっぱアナログいいわぁ……。

ぼちぼち暇だったら挿絵描こうと思います。

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